混部パラレル | ナノ
「仗助、ちゃんとこの親父をぶん殴ってやったか?」
「いやー、別に良いんスよ。お袋も分かってた事だし。俺もお袋も、納得の上で生活してたんスから」
物分りの良い仗助の言葉に、シーザーは「マンマミーヤ」と溢した。
まさか浮気をするとも思えなかったので、ジョセフに“隠し子”が居たことはもちろん驚いたが、何よりも物分りの良い仗助に驚いた。
最初に言い淀んだ理由を問えば、ジョセフと友人(シーザーのこと)の仲に影響があったら…と考えてのことだったと言うのだ。
人間が出来すぎた発現には驚かずには居られない。
「しっかし、まさかこのスカタンが…ねぇ」
奥手なガキだと思っていたのに、将来は妻に隠れて愛人と息子まで作るらしい。
シーザーが振り返ると、ジョセフが「テヘ」と笑みを作った。
まだ余裕があるらしい。
シーザーは手を合わせてシャボンを作り、フゥーと息を吹きかけて、既にたくさんのシャボンに囲まれて動けないジョセフに飛ばした。
「面白い波紋法だね」
興味深々なジョナサンは、ジョセフが「面白くねーっ!!!」と叫ぶ声も気にせずシーザーの隣に腰掛けた。
ちなみに、DIOはとばっちりが生死に関わる事を悟って自室へ戻ってしまった。
ジョルノもそれに続いて退室したらしい。
歓談ムードの中でジョセフは一人、冷たく固い床に正座させられている。
「シーザーだって、女の子と見ればナンパするくせに!!」
「俺は家庭は大切にする男だぜ?」
グッと押し黙るしかない。
ジョセフだって、現時点では家庭を作れば大事にしたいと思っている。
が、何を言ったところで事実は事実。
未来の自分なりに、何か事情があったのだろう、と思うしかない。
「しかし、あっちのスカタンから、えらくしっかりした息子が生まれるんだな」
「いや、別にたいしたことないっスよ」
べた褒めされて、仗助もたじたじだ。
まさか、嫌いな男をちょろまかして小遣い稼ぎを企んだ事があるとは言えない。
真正面から自分を褒めちぎるシーザーから、仗助は堪らなくなって目をそらした。
「ジョセフさん…浮気だなんて。ホリーさんが知ったら悲しみますよ」
「花京院まで俺をいじめるのか!?ホリーって誰だよ!!」
「俺のお袋だ」
「てことは…娘!?」
背水の陣である。
敵しかいない。
今にもいじけそうなジョセフに、仗助もいたたまれない気持ちになってくる。
自分が存在したからだと卑屈な事を言うつもりはないが、こうなってくると何かいい説明方法はないかと考えざるを得ない。
「まぁ、ジョセフも人間って事じゃない?」
徐倫が片肘をついてそう言うと、シーザーは「まあな」と頷く。
分かっては居るのだ。
人間誰しも間違いはある。素敵な女性がいれば、口説きたくなるのも分かる。(シーザーにしか分からないだろうが)
とは言え、シーザー的にはジョセフにシャボンと飛ばすのは仗助のためなので、別にシャボンを消すつもりはない。
ジョセフが波紋で対抗しないでそれを甘んじて受け入れているのも、それが分かっているからなのだろう。
「なんだよシーザー、納得するのにまだシャボンを追加するのかよ!!」
「黙ってやられてるお前が面白くてな」
「なっ!?そんな理由かよー!!」
「黙って波紋を受けるなんて、殊勝なもんじゃないか。仗助に悪いと思ってはいるようだな」
ニヤリと笑うシーザーに、ジョセフは苦い顔をした。
「未来の俺の失態だから今の俺にはどうしようもねーが、俺がその失態を犯さなかったら仗助が存在しないから、それも嫌だとか思っちまってよぉ」
「だからおとなしくお仕置き受けてるの?」
ジョセフはジョナサンにまじまじと覗き込まれ、「ううっ」っと小さく呻いた。
チラリと仗助を伺い、観念したように「そういうこと」と呟く。
相当恥ずかしかったのか、耳が赤くなっていてシーザーは噴出さないように目をそらした。
「よかった!!!」
「へ?」
「僕の子孫が、良い子達で本当に良かったよ」
「いやー…いい子だなんてそんな」
「僕は皆がいい仲間を得る事が出来て、家族で仲も良くて、本当に嬉しいんだよ!!」
「爺ちゃん、そんなに褒めちぎるなんて…「僕の人生も、全く無駄ではないって、今こそ強く感じる事ができるよ!!!!!」
心底嬉しそうに笑うジョナサンに、各々で多様な反応を見せた。
シーザーと花京院は手放しで喜ぶジョナサンを優しく笑って見ていたが、ジョセフと仗助は耳まで真っ赤になっている。
そんな微笑ましい空気にいたたまれなくなった空条親子だけは、非常に苦い顔をして目を細めていた。
「だからね、みんな…」この瞬間、ジョセフと空条親子はぴしりと目の色を変えた。
恐ろしく嫌な予感がする。
手を合わせて、ニッコリ微笑むジョナサンは、そんな様子には目もくれず爽やかに言い放つ。
「部屋が足りなくなりました!!!」
これから何人現れるか分からない現状で、ここにきて新たな問題が浮上することになる。
それは現実的で、酷く悩ましい問題であった。