神。

エンヤが集めた信者の中から、時折従者として若い女が連れて来られる。
どいつもこいつも私に心酔していて、私の食事に利用されるとも知らずにノコノコやってくる。
無知とは斯くも愚かな事なのか。


「あぁ…DIO様!直接お会い出来るとは!」

「……偶然気が乗っただけだ」

何の取引をした相手だったか…もう興味が失せていたから忘れていたが、すっかり利用し終えたその男が若い娘を連れて現れた。
聞けば自分の娘を嫁にして欲しいのだと言う。
酔狂な男の隣で、ほどほど整った顔をした女が、信じられないほど醒めた表情をしていた。
父親に売られそうになっているにも関わらず、まるで他人事のようである。



「娘にはその気はなさそうだが?」

「そ、そんなわけでは!…名前!ちゃんと挨拶をしないか!!」


父親にピシャリと叩かれ、名前と呼ばれた女は顔を上げた。
テレビ向こうを見るような表情で私の顔をジッと見つめ、ようやく聞き取れる小さな声で呟いた。



「そんな事出来るんだ…」

恐らくそれは独り言。
ジッと見つめる視線がハッと逸らされた瞬間、私は無性にその意味を知りたくなった。


「何の事だ?」

私の声に慌てた男は、名前に向かって手を振り上げる。


「挨拶をしろと言っているだろう!!」


しかし、その男の汚い手が名前と呼ばれた娘の頬を打つ事はない。
時を止め、男を突き飛ばして名前の背後に回った。
時が流れ始めると同時にドアを突き破って飛んでいった男が気絶し、名前は静かに私を振り向いた。
時が止まったことなど知るはずもないのに、動揺はあまりみられない。


「…私を庇う必要などありません。叩かれても、死ぬわけではないですし」

「ふむ……」


相槌をうちながらザ・ワールドを出現させてみれば、一瞬揺れる名前の瞳。時が再始動した時の、何が起きたのか動揺する様子のない様。
全ての事象は、たった一つの理由づけで結ばれる。


「貴様、スタンド使いだな?」

「……………」

「お前の力はなんだ?」

「……貴方は時を止めるのですか?」

「何故そう思う?」


名前は少し考えて、「恐らくそれがあたしの力なのでしょう」と答えた。
まだ自分の力を把握していないという事か。
非常に興味深い話だ。
しかも、それが発展途上である可能性が高いのだからますます面白い。
恐らく、どんなスタンド使いよりも役に立つ。
私は名前を我が邸に置く事に決めた。
きっと私の役に立つだろう。ただ単純にそう思った。

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