三部




「これは一体、どういうことだ」

DIOに睨まれた私は、去年と同じ光景に肩を竦めた。

「だめ?」

「可愛らしく小首を傾げても駄目に決まっているだろう!!」

「いや、僕はオッケーです!!こっちに向いて、もう一度やってください」

カメラを片手にとち狂った事を言う花京院は無視して、私はDIOに向かって口を尖らす。


「勝手について来ちゃったのよ」

「ぬっ…駄目だ!!元居たところに戻してこい!」

捨て犬じゃないんだから。


「やれやれだぜ。うまい飯のためにどうしてもDIOの家に行くって言うから仕方なくついて来たってのによ…」

「承太郎!お前は誘ってない!帰れ!!」

「仕方ありませんね…帰りましょう」

仕方ないと言う割に楽しそうに私の腕を引く花京院を、DIOが睨んで引き止める。


「ソイツは置いていってもらおう!」

「先約は僕達なんです」

「何?」

「そうなのよDIO、ごめんね。ご飯…残念…」

本当に残念…。
テレンスさんのご飯楽しみだったのに。
承太郎に促されて出て行こうとすると、もう一度DIOに引き留められた。


「どこに行くのだ?」

(やだっ!捨て犬みたい!!!)

キュンとしてしまった私は、開けようとしたドアから手を離して、一歩DIOに近づく。
射し込もうとしていた日差しが細くなり、DIOもこちらへ一歩近づく。


「三人でどこに行くのだ?」

「水族館よ。イルカショー見るの」


DIOがつまらなそうに口を曲げ、私は気づいた。
大抵の水族館のイルカショーは、日光の差し込む場所。


「テメーは来れないんだから、諦めな」

「僕はサクランボ狩りが良かったんですけどね」

「花京院、諦め悪いぜ」


き…汚い戦略だ。
まぁ、美味しいご馳走に釣られて、先約を忘れていた私にはあんまり口出し出来ないけど。(挙げ句に先約すっぽかそうとしたしね…。)


「ぬぅ………。テレンスが、わざわざデザートまで用意していたが…」

「て…テレンスさんのデザート!?」


考えるだけで涎が出るわ!
色々作れるのに、何故かプリンが一番上手なのよね。
あれはプロの味だわ。
でも、私のお気に入りはシブースト。
特にリンゴのシブーストが大好き…

「リンゴのシブーストだったんだが」

「マズい、承太郎!」

「テメー!卑怯だぞ!!」

「しかもメインはお前の好きな鳥の唐揚げ!餡掛けも、ネギのソースも用意してあるぞ!!」

「おい、急に庶民だな」

「悪かったわね!」

だって、ひっくり返ったって、私は日本人なのよ!
考えてたらお腹が空いてきたわ。


「DIO、みんなで食べようよ。お腹空いた」

本格的にお腹空いたわ。
ハァとため息をつくと、DIOは仕方ないと諦めて、承太郎と花京院を中に招いた。


「料理が冷めてしまうかと思いましたよ」

「テレンスさん!お腹空いた!」

「女性ならもう少し慎みを……。まぁ無駄ですね」

テーブルに並んだ料理に釘付けの私に、テレンスさんは諦めた様子で椅子を引いてくれた。
素早く隣に座ろうとするDIOが椅子に手をかけると、恒例のアレが始まった。


「その席は譲れない!」

「ここは私の指定席なのだ!」

「じゃあ今度からこっちに変えるんだな」


本当に仲良しだな。
きっとこれが男の友情ってやつなのね。


「テメーとは相容れないようだな」

つーか、貴方今回はよく喋りますね。


「貴様、余程死にたいらしいな…」

DIO様、スタンドを出すの止めて下さい。
私の料理がピンチです。

睨み合いが始まり、私はフォークとナイフを手に眉を寄せた。
食べ始めたいのに、館の主がまだ席についていない。
このまま料理が冷めるなんて……。

悲しげに料理を見つめる私に気づいたテレンスさんが、グラスに水を注いでコッソリ耳打ちしてくれた。

「しばらくかかりそうですから、お先に召し上がって下さい」

この屋敷のシェフに言われたのだから仕方ない!!
勇んで食べようとしていると、いつの間にか正面に座った花京院がグラスを掲げたので、反射的にグラスを差し出した。
カチンとグラスが心地よい音を立て、花京院は爽やかな笑みを浮かべる。

「ハッピーバレンタイン」

「ハッピーバレンタイン」

花京院にならってそう告げて、ようやく料理にありつ…

「何二人でいい感じに食事始めてるんだ?」

「花京院、テメー裏切ったな!?」

「裏切ったわけではありませんよ。彼女の隣を譲る事にしただけです」


小癪な…。
爽やかに言ってのける花京院に、二人はギラギラした目を向けてスタンドを再び発現させる。
もう好きなだけやっていればいい。
ただ、一つだけはっきりさせておかなければ。
楽しそうに睨み合う三人に、私は笑って断っておく事にした。

「料理に被害があったら、もう二度と口きかないからね」


しっかりご馳走を堪能してシブーストを味わってから、三人に(今年こそ)ラッピングしたチョコレートを渡して帰ろう。

一人でプランを立てて、私は三人が長い膠着状態に入った中でようやく料理にありつくのだった。





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