クリスマスパーティー




(勝手に)パーティー会場となったDIO邸へ、クリスマスパーティーに招待された面々が集まっていく。


「予想以上の規模ですね…」

ジョルノは窓から外を見ながらそう零した。
カーテンの影で、DIOは非常につまらなそうにしている。
ふてくされて曲がった口元がチャームポイントである。


「ぬぅ…今日は家族の団欒の日だぞ…」

「ええ、まさか恋人からデートの計画を妨害されるとは思っていませんでした」


噛み合ってないですよ。
しかしそれに気づく様子もなく、二人はため息をついた。


「第一、肝心の彼女の姿が見えませんが…あんなに楽しみにしていたのに、遅れるとも考えにくいし…」

「さぁな、テレンスと何やら画策していたようだったがとにかく腹が減っていて「まさかパードレ!?」

「いや、耐え抜いた」

「さすがパードレ!!」


手を返すのはえーな。
しかし、耐えたってのもどうなんだ…。


ーガチャ…

「ジョルノ、こんにちは」

「あぁ、ようやく顔を出しましたか。アナタの姿が見えないのでとても寂しかったですよ」

探していた彼女をふわりと抱き寄せると、バニラの甘い香りがした。
ケーキでも焼いていたのだろう。
少しだけ元気がないようにも見えるが、準備疲れだろうか。

「みなさんの所に行きましょうか」

「仕方ない、ジョルノが行くなら私も行こう」

何その理由。
可愛いですよDIO様。

三人が会場に顔を出すと、テーブルには既に用意されていて和やかなムードでパーティーが始まろうとしていた。
ぐるりと会場を見渡し、初めて今日の面子を知ったジョルノはたっぷりと間を置いて一つ咳払いをした。


「みなさん、寒い中よくいらして下さいました」

ジョルノの声に、会場に集まっていた人達が振り返る。
何度見てもすごい顔ぶれである。


「ジョルノ、すごい顔ぶれだな。さすがじゃないか」

ブチャラティがこっそりそう言って笑うのを、ジョルノは微妙な心境で聞いた。
確かにすごい。すごいんだ。


「お招きいただきありがとうございます、ボス」

今日は頭巾を被っていないリゾットが、きちんとスーツを着こなして頭を下げる。
後ろで既に騒がしくなっている個性的な面々が気にはなるが、よくまとめていると評価すべきだろう。


「いいえ…ボクの彼女が計画したんですが、まさか皆さんで来てくれるとは思いませんでした。すみません、給料も出ないのに…」

「あ、いや…別に給料なんて…関係ないです」

「ふふ、言っただけですよ。彼女も喜んでいると思います。ありがとうございます。楽しんで帰って下さい」


そう言いつつ、ジョルノはその大事な彼女がわずかに元気ないことを思い出していた。
チラリと振り返ると、アバッキオやフーゴと楽しそうに話しをしている姿が見えて胸をなで下ろす。
デートを諦めて開いたパーティーなので、他の誰でもなく最愛の彼女に満喫してもらいたいのが本心だった。
彼女に渡そうとドリンクを手に取ると、ジョルノは後ろから呼び止められて渋々振り返った。


「まさかオレまで招くとは思わなかったぞ」

「ええ、ボクも予想外です」


ピンクにおかしなまだら模様の髪の男を横目で見て、ジョルノは目を細めた。
まさか前のボスであるディアボロまで招かれているなんて予想できるはずもない。
少し楽しそうにしているのが、またなんとも微妙な心境にさせてくれる。

「…招かれたからって来るとは思いませんでした」

「トリッシュが行こうと言ってきかないからな。引きこもっていたらダメだとうるさくてな」


何と今更な説教…。
そう思いはしたが、口にださないのは面倒くさいから。
そんな彼の背後の壁際からこちらの様子をチラチラ伺っているスクアーロも、そんなスクアーロにベタベタしているティッツァーノも、心の底から面倒くさい。


「セッコ、甘いの2つ居るか?もっとか??」

本当になんて面子だ…。


「テーブルの料理に直接手を触れないでくださいよ。カビそうですから」

「何…?」



あー、面倒くさい。

カビの人とバカを外に投げ捨てて、ジョルノは姿の見えなくなった彼女を探す。
やはり元気がないらしい。
彼女のお気に入り場所であるバルコニーを覗くと、外の景色を眺めている彼女がいた。
日はさしているが、風は冷たい。



「どうして企画者のアナタがパーティーを抜け出すんですか?」

「ジョルノ…」

外の冷たい風に当たっていた彼女は、少し表情を陰らせたまま微笑む。
何に悩んでいるのかは知らないが、少し弱ったその表情が悲しい。


「どうしたんですか?」

「私…知らなくて…クリスマスパーティーなんか企画しちゃって…ごめんなさい」


何を言っているのかよく分からない。
ジョルノは首を傾げ、少し考えて一つの考えに到達した。

(まさか、デートの計画に今更気づかれたとか?)


もしそんなことで悩んでいるなら、どうにかせっかく開いたパーティーを楽しんで欲しい。



「その事なら気にしないで下さい。
ボクもパーティーを楽しんでいるわけですから」


「でも…」

「良いですから!アナタが楽しまないと意味がありません」

「ジョルノ…グラッツェ」


チュッと触れるだけのキスをして、二人で会場に戻る。
先ほども盛り上がってはいたが、さらに沸いた会場のなんとも異常な盛り上がりにジョルノは再び首を傾げた。
部屋の中心に人が集まっているにも関わらず、DIOだけは壁際でその様子を楽しげに眺めてワインを飲んでいる。
彼には見ているほうが楽しいようだ。


「パードレ、これは何の騒ぎですか?」

「うむ…テレンスの企画で、クリスマスプレゼント争奪戦らしい」

「はあ?」


盛り上がりの中心では、テレンスとホルマジオ、それにドッピオが座っている。
あの親父、早速引きこもってるじゃねーか。
三人がトランプを手にお互いを牽制して睨みあっているところを見ると、どうやらトランプゲーム大会が開催されているらしい。
ポーカーならテレンスより彼のお兄さんが思い浮かぶもんだが…。



「あ…」

「??」


不意に声をあげて目を丸くして固まる彼女につられ、ジョルノはその視線を辿る。
少し開けられた窓から中を覗き込む影が見え、ジョルノは眉を寄せた。
明らかに不審なその影は、どうやら中に入ろうとしているらしい。
スタンド使いばかりのパーティーに乗り込もうとするなんて、勇者かお前は。
その勇気には敬意を表したい。



「大変!」


そう言って彼女は先に飛び出し、窓へと全力で走る。


「え!?ちょ、何してるんですか!?」

驚いて固まってしまったため、後を追いかけても追いつけない。
影はそんな彼女に気づかず、窓に手をかけて中へ侵入しようとしていた。



「スワロー!!!アイツを縛りなさい!」


スタンドを発現させ、迷いなくその侵入者へと力を使う。
数々の戦いを生き延びた戦士のような迷いのなさと素早い判断に、パーティーに参加していた全員が何事かと目を見張った。



「え!?うわっ!!!!」


目には見えない力で手を後ろ手に縛られ、足を固定された影は、室内へと倒れ込んだ。
赤い服を着たそいつは、倒れた弾みで帽子を落として顔を晒す。



「なっ…!?」

「おいおい…マジかよ」


驚きに瞠目し止まっていた全員の時間が、「イてて…」とその男が呟いた瞬間に動き出す。



「「「「「メローネっ!?」」」」」

「メローネ!何やってんだ!!!」


おお、そんな感情的になれるんですねリゾットさん。
暗チのメンバーは見慣れているのか、呆れた様子でそれを見守る。


「今年こそはメローネサンタを成功させようと思ったのに!!」

「そんなもん、家でやれ!馬鹿野郎!!!」


ガインとすごい音を立てて殴られたメローネは、手を縛られたままの為に頭を押さえることも出来ずに悶えてる。
やれやれ、やっぱり暗チか…。


「メローネサンタって……本当に面白いチームですね」

「メローネじゃおじいさんというかお兄さんくらいじゃない??」

「は??」


時々何を言っているのか理解出来ない。
今はそんなことは関係ないように思えるが…。
シンと静まった会場のみんなは、困惑した状態の彼女に視線を寄せる。


「クリスマスって、赤い服を着た老人が不法侵入しても許される日なんでしょ!?メローネはなんちゃってサンタクロースだわ!!!」

「「「「ブハッ!!!」」」」

笑いの渦が沸き起こったことに彼女は何事かと目を丸くし、真っ赤な顔でテレンスを睨みつける。
騙されたのだと気付いたらしい。


「テレンス!騙すなんてひどいわ!!!」

「いや…まさか本当に信じるとは…ククッ」

「もう二度とテレンスなんか信じないから!!!!!」


ムキになる彼女を可愛いという声と、なんとも哀れむような視線とが飛び交い、ムウと膨れっ面になる彼女に冷たいドリンクを差し出した。


「あんまり素直な反応をするからからかいたくなるんですよ」

「そんなことで可愛いと言われたって、全然嬉しくない」


再びカードゲームが始まり、先ほどと同じ空気に戻った部屋を見ながら壁に背を預け、冷たいドリンクを飲むと羞恥で頭に上っていた血もゆっくりと元に戻っていく。



「まさか、不法侵入を気にして元気がなかったんですか?」

「だって、パーティーが大きければ大きいほど危ないって言うから」

「たとえそれが本当でも、こんな危険な家に侵入したら…そうですね、逆に哀れです」


ジョルノの言葉に、それもそうねと笑う彼女はもう陰ってはいない。


「ジョルノ楽しい?」

「えぇ。若干スリリングでとても面白いですよ」

「今日はジョルノのためのクリスマスパーティーなのよ?」


「ボクの…ですか?」


そうよと笑う彼女は、なぜかむくれっ面のDIOを見て笑う。


「だって、ジョルノの大切なDIO様とのクリスマスもできるものね」

「そう言う割には私にかまう様子がないがな」

「パードレ、すみません」

「まあ良い、挨拶に回っていた息子にそんな事を言うほど子供ではない」


どシニアですものね。


「ジョルノの大切な人たちとすごせたら楽しいと思ったの」

「ふん、まあ悪くはない案だ」


大人になってくださいよDIO様。
感じていたよりも仲の良い二人の様子に、ジョルノは溜まらず声を出して笑った。


「本当に、こんなに素晴らしいクリスマスは初めてですよ」

「本当!?」

「えぇ、ありがとうございます」


ジョルノが微笑み、それを見て彼女は嬉しそうにはにかむ。
穏やかに、幸せに満ちた時間の中で、DIO達はパーティーが終わるまで笑いながら会話を楽しんでいた。













「え!?…オレいつまでこのままなの!?」

床に倒れたままのメローネを、ギアッチョはチラリと振り返る。

「もう指令が出てない時はずっとそうして縛っててもらいたいもんだな」

「頼んでみるか」

「そりゃないぜ!ギアッチョ、リゾットー!!!」






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