クリスマスパーティー準備編




全てはこの一言から始まった。

「ジョルノ、今年のクリスマスは皆でパーティーするんだよね??」


何でそんなに確信めいているんですか?

さては自分で提案でもしてしまっていたのだろうか…と記憶を探るが、心当たりは全くない。
彼女といえばすでに楽しそうにクリスマスパーティーの段取りに取りかかっているではないか。
今さら二人で過ごしたいとも言い出し辛い状況に、ジョルノは恐る恐る探りを入れる。


「みんなってどのみんなです…でしたっけ?」

「みんなはみんなだよ。ブチャラティとアバッキオと、フーゴにナランチャとミスタ」


なるほど、チームのみんなレベルなら何とか説得してパーティーを欠席してもらえるだろう。
せっかく準備しているのだから申し訳なくはあるが、
今年は二人でとびきりロマンティックなクリスマスを過ごしたかった。



「それなら、ボクが案内を渡しましょうか?」

「本当?ありがとう」

「どういたしまして」

「じゃあ、私は残りを配るね」


にっこりと笑って爆弾を投下する彼女を、最早止める術はない。
正直に打ち明けずに裏で手を回そうとした罰なのだ。


「他に誰を招くんですか?」

「たくさんよ」


いつからこんなにパーティー好きになってしまったんだろう。
清々しいほどの笑顔で走り去る彼女を見送って、ジョルノは大きなため息をついた。
もう諦めるより他にない。





「クリスマスパーティー?」

「えぇ、ボクの家でします。よかったら来てください」

「恋人との最大のイベントにオレらを呼ぶなんて…何か企んでのか?」


相変わらず態度も身体もデカいアバッキオにそう言われて、ジョルノはムスッと目を細めた。
ブチャラティがこの場に居なかったら、間違えてアバッキオをボコボコにしていたかも知れない。

「他でもない、その彼女のために開くんだろう?」

ブチャラティの言葉に、アバッキオは「ふーん」とつまらなそうに呟いて招待状をポケットにねじ込んだ。


「まぁとにかく…どうにも止められそうにないので、皆さんお暇なら来てください」

「あぁ、ボスのホームパーティーだ。必ず行くさ」

「ブチャラティが行くなら、ウチのチームは全員参加だろうな」


ジョルノはやはり楽しくなさそうに、アバッキオの言葉に「そうですね…」と返した。











クリスマス。
それは世の中が最も浮つくイベントだ。
街はイルミネーションで色とりどりに輝き、寒く凍えそうな季節を俄かに盛り上げる。
家の中にいつの間にかセットされた巨大なツリーは、テレンスと共に息子であるジョルノの彼女が飾りつけたらしい。


「てっぺんの星をどちらが飾り付けるか、真剣に勝負よ!!」

「私に勝負で勝てると思っているのですか?」

どうでもいいが、腹が減った。
あの女…うっかり食べてしまったら、ジョルノに絶縁されるだろうか。
DIOはテレンスに勝負を挑む女を見ながらソファーで一つアクビをした。


「そもそも、クリスマスとは何のためにあるのだ?」

DIOのその言葉には二人とも心底驚いたらしい。
目を丸くして振り向くなり固まってしまった。無礼な奴らだ。


「「DIO様、知らないんですか!?」」


本当に殺したら駄目だろうか。




「DIO様!クリスマスはサンタがトナカイでの飛行に成功した日よ!!」

「「は?」」

「本当よ?だって私の大好きな本にそう書いてあったもの」


自信満々に言い切るこの女、馬鹿以外の何者でもない。

「どんな本を読んだんですか…。そんな事の為に世界中がお祭り騒ぎするなら、月面着陸の日は祝日になってますよ」


もっともな言い分に、女は口を尖らす。

「良いですか?
クリスマスというのは…ー











「クリスマスパーティー?」

リゾットの手に握られた招待状に、チーム全員の視線が注がれる。
暗チの紅一点だけは目を輝かせたが、他のメンバーは心底面倒くさいと顔に書いてある。


「参加は強制なのか?」

プロシュートの言葉に、リゾットは首を振る。

「自由みたいだな」

「じゃあパスだな、仕事じゃねーし…手当て出ねーし」


全員が「確かに」と頷き、たった一人参加したがっていた少女は慌てて口を挟んだ。


「でも!!給料前なんだよ!?」

「分かってるよ。だから面倒なんだ、金かかるし」

「ご馳走出るんだよ!?」

「それは…」

この手の誘惑に弱いイルーゾォはグッと押し黙った。
いつもの給料前の食事を思えば仕方なくもあるが…。
他のメンバーは、それでも面倒だと難しい顔をしている。


「お前が行きたいなら、オレは行っても良い」

リゾットの一言でようやく事態は動き出す。
喜ぶ彼女は、それだけで周りのメンバーを動かしてしまうから。


「しょーがねぇな…パーティーにリーダーだけじゃ心配だからな…。オレも行く」

「ちぇっ、結局そうなるんだよな…」

「いやなら来なくて良いぜソルベ」

「いいや、大事な姫が行くんだ。オレも行くよ」


「決まりね!!一緒に行くのよ!やったー!!!」


こうしてパーティーの準備は、ジョルノの願いとは裏腹に整っていく。それぞれの思惑をのせて。







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