友達メローネ(5部メローネ)
「なぁ、オレと付き合ってくれって〜」
何て軽薄な男なんだろう。
それが第一印象で、次にくるのは…
「しつこい」
「ベネ!怒った顔もディ・モールト可愛い!!」
変態め。これが第三印象とでも言えばいいんだろうか?
もう一週間くらいこうして付きまとわれては必死に巻く生活を繰り返している。
彼がギャングでなければ、警察につき出してやるのにという考えも、一体何度考えただろう。
思案する事に疲れて、いつもの道を通って仕事へ急ぐ。
「あ?メローネじゃねーか」
白い服を着た、変わった髪型の男が凄い目付きでしつこく付きまとうメローネを睨み付ける。
(まさか抗争に巻き込まれたりしないよね…)
頭を過った恐怖にすくみ、立ち止まるとメローネは私を通りすぎて睨み付ける相手に向かって行く。
(まさかメローネが喧嘩を!?)
「ギアッチョ!何なに?買い物?」
「あぁ?てめえこそリーダーに言われた仕事はどうしたんだよ」
ギアッチョと呼ばれた男は、どうやらメローネと同じグループらしい。
接し方が「仲間」と言うより「犬猿」な感じがするのは、多分気のせいじゃないだろう。
メローネがヘラヘラと肩に触ってくるのを鬱陶しそうに払っている。
「仕事はもう終わったよ…って、普通にお使いに出されただけだし」
ヘラヘラ笑うメローネをすり抜けて仕事に行けないものかと考えるものの、狭い路地の入り口に立たれてしまっては、メローネに声をかけなくて避けてもらわなくてはその路地にいけない。
どうしたものかと狼狽えていると、ギアッチョがこちらをチラッと伺ってくれた。
そこを通りたい事に気づいてくれたのかと喜んだのも束の間で、ギアッチョはメローネをまじまじと見つめて私を指差した。
「まだこいつにこだわってんのか?」
初対面の人に「こいつ」呼ばわりされて苛つかない人がいるなら、是非対面してみたい。
ムッと口を引き結ぶ私をみて、メローネは笑った。
「いいだろ?だって…ディ・モールト、ディ・モールトタイプなんだよ」
「おいおい、何かの病気か?女をとっかえひっかえフラフラしてたお前が、もう一ヶ月だぞ!?」
「ちょっと待って下さい」
ギアッチョの聞き捨てならない言葉に、思わず会話に割って入る。
「あぁ?何だよ…」
明らかな苛立ちを隠しもせずに睨まれても、今の私にはそれどころではない。
「一ヶ月って何ですか?」
「っ!!気にしなくて良いから!ほら名前、仕事に遅れるよ?」
慌ててそう言うメローネの顔は、初めてみるひきつった笑顔だった。
軽い笑顔ばかり浮かべるメローネが、何かを必死に隠そうとしていると思うと気になって仕方ない。
「もう一ヶ月も前に『ベリッシモ可愛い子見つけた』とか騒いで煩かっただけだよ。それから毎日毎日…」
何でもないようにサラッと言うギアッチョを何度か目をしばたいてからメローネを見た。
苦虫を噛み潰したような苦い顔をしたまま真っ赤になっているのが、マスクをしていても分かる。
「……メローネ、何か言いたい事は?」
「……それ聞くか?」
ますます苦い顔になるメローネは、少なくとも軽薄ではない。
ギアッチョもそんなメローネを初めて見たのか、キョトンとしたまま固まっている。
「………付き合って欲しいんだけど」
口をへの字に曲げて唇を尖らせ、赤くなったメローネはいつもの軽薄で変態な男ではない。
初めてメローネの言葉に、彼の気持ちが見えた気がした。
「私、よく知らない人とは付き合わないって決めてて…だから、まずはメローネの事教えてくれる?」
メローネがあんまりにも気まずそうに赤くなるから、次第に緊張が私にも移って顔が熱い。
ギャング相手に大胆な申し出をすると、メローネは目を輝かせて笑った。
「もちろん!!オレの何からナニまで教えてやるよ!」
「「サイテー(だな)」」
訂正。
やっぱりメローネは変態だ。
思わず意見が一致したギアッチョと目を合わせ、二人でメローネに背を向けた。
「ギアッチョさんでしたっけ?」
「おぃ、キモいから『さん』って止めてくれ」
「ギアッチョ、私リストランテで働いてるの。良かったらランチでもどう?」
「あぁ、良いな…ちょうど腹減ったし」
「ギアッチョ!!名前はオレと付き合うんだ!手を出すなよ!!」
「まだ付き合うなんて言ってません!!」
慌てふためくメローネが先に歩く私とギアッチョの間に何とか入ろうとするのを笑ってかわし、結局三人で職場までを歩いた。
「名前〜!」
今はまだ、慌てるメローネと友達の距離で…。
「一ヶ月…どうしてすぐに声をかけなかったんだろ?」
「それはプロシュートに色々教えてもらってたからだろ…」
「ギアッチョお願い!もう止めてー!!」
メローネと悪巧みして遊ぶのは、本当に楽しそうです\(^o^)/
私のメローネはこんな感じ。
こりゃ完全に色眼鏡で見てますな(笑)
空
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