醒めない夢(五部DIO捏造)


「名前、私の仕事を手伝え」


こんなに上からモノを頼んで、あっさり引き受けさせてしまう人を私は他に知らない。
いや、人ではないのだけど。



「なんだ、手伝えって言うからどんな量かと思ったのに、大した量じゃないですね」

「早く終わらせたかったのだ」


ジョルノの、パッショーネのボスとしての仕事を影ながら支えるDIOは、手際よくパッショーネの格を上げ、親子で組織をかなり広げていた。
今や肩を並べられる組織などないのではないかと思うような組織を、しかも麻薬を流す事なく作り上げたジョルノは、その世界ではかなり有名らしい。


(しかし、本当に父親なんだよな…)


雰囲気が似ていると言えば、確かにどことなく似ている。
輝くような金髪も、放つオーラの神々しさも似ている。
他人を惹き付け、魅了し、従える統率力も。
DIOはそこに残虐さが加わるのに、何故か人はそれすらも信仰するのだから、全く謎だ。
とはいえ、自分もその一人なのだけど。



「早く終わらせて何か用事でもあるんですか?
まさか、デートですか?」


言いながらドキドキした。
DIOに彼女が居る話は聞いていない。
しかし、彼に惹かれる女は山ほどいる。
どんなに好きでも、それを口にする勇気なんか起きるはずもなかった。


「まぁな」

「えっ!?」


まさか頷かれるなんて…。
勇気がないだけだった自分に、絶望が首をもたげる。
誰と?



「だから早く終わらせろ」

「…もう、終わりましたよ」


唇を尖らせて、零れ落ちそうな涙を飲み込んだ。
頭の芯が冷えて書類を差し出す手が震え、それを見たDIOは唇を綺麗に歪めた。


「それで、どこに行きたいのだ?」

「………へ?」


きっと、物凄い間抜け面だったと思う。
目を丸くして顔を上げた私の頬に、DIOの手がそっと触れた。


「今日はお前の好きな所に連れて行ってやる。好きな場所を言え」

「な…どうして…?」


「今日が誕生日なのだろう?名前」


「なぜそれを知っているのですか?」
…そう言うより早く抱き寄せられた。
太く、たくましい腕の中で頬に触れたものがDIOの唇だと気づくまでにかなりの時間を要した。


「私の女になれ、名前。食糧でも暇潰しでもなく、興味があるのだ。お前に」

「…これは、…………夢?」

「夢ではない。だが、それでも良かろう。
醒める事はないだろうがな」


DIOの指はくるりと私の髪を掬い上げ、そっと髪にキスをした。
それだけで気がおかしくなりそうな魅力を感じてしまう私は、かなりDIOに溺れているのかも知れない。
はたまた、彼の色気故か。


「仕事をやらせても早く、スタンド能力もまぁ面白い。私をこんなにも退屈させない女は他には居ない」


髪に口づけたまま妖艶な笑みを浮かべるDIOは、この世の何よりも美しい。
太陽の光がジョルノならば、DIOは月。
優しく冷たく、妖しく暖かい。


「他の男になど触れさせたくもない。私だけのものになれ名前」



「DIO様…困りました…

私、yes以外の言葉が見つからないんです。
こんなに素敵な言葉をもらったのに…気の利いた言葉一つ見つからないんです…」


嬉しくて幸せで、高鳴る心臓が爆発しそうだ。
側で手伝えるだけで幸せだったのに、今や腕の中。
抱きしめ返したいのに、腕が震えてそれすら叶わず、必死に服を握った。
感情が高ぶって滲んだ視界で、DIOが再び笑ったように見えた。

「良い。言葉を探して紡ぐ事は私がしよう」


頬をすっと撫でた指がゆったりと顎に添えられ、綺麗な唇が自分の唇へと重ねられる。
夢のような…
けれど覚めない。

どうかこのまま


夢なら醒めないで…




伊真の誕生日に承太郎を書いたにも関わらず、Ricのバースデーを完全にスルーしていた事に気づいて夏に書いてた作品。
未完成で放置されてたので完成させました。
年内に出来てよかった。半年もすぎてゴメチョヽ(^0^)ノ

12.12.19 空


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