短編(jojo) | ナノ


 なかなかの体格を持つ男、ジョセフ・ジョースター。愛称はJOJOだ。彼は、その大きな体躯をできるだけ壁に隠しながら――でも隠しきれずにいる――ある場所を見つめていた。

「JOJO、お前こんな所にいたのか」
「ゲッ……シーザー」

 ぽんと肩を叩かれながら声をかけられる。嫌々振り返るとそこには兄弟子のシーザー・ツェペリがそこにいた。
 彼は一度訝しそうな表情でジョセフを見たが、ジョセフの後ろの先にあるものを見て、何かを察したらしい。「ハッハ〜ン」とジョセフが嫌だと思っている気取ったような表情を浮かべた。

「何だお前、あそこの花屋の看板娘が気になるのか?」

 ニヤァ、とした顔でクイクイと親指でさす先には、店に花々を並べたり時折くる通行人に快活な笑顔で対応する少女の姿があった。

「う、うるせーな。お前にゃ関係ねーだろ」
「まあまあそう言うなってJOJO」

 分かりやすいジョセフの反応に、シーザーはまた一層にやけた顔になった。シーザーは、ライバルであり弟弟子でもあるジョセフの淡い恋心が可愛くて仕方がないらしい。やはり兄貴肌な男である。少しジョセフの方が身長が高いものの、シーザーは彼の肩を組んでヒソヒソとアドバイスを送る。

「彼女の名前は聞き出せたのか?」
「……ああ、なまえっていうらしい」
「ほうほう。あの花屋には何回通ってる?」
「えーっと……」

 ジョセフは両手で指をおり、数え始めた。

「7回だな」
「彼女の好きなモノは?」
「花と日光浴、あと甘いスイーツが好きらしいぜ」
「なるほど。だからお前の手にはアップルパイの入ったバスケットがある、と」
「あ、バカなに勝手にのぞいてんだよォ!」

 バスケットを庇うように持つジョセフ。焦った表情の彼に対してシーザーは更ににやけた顔になっていた。どんだけ弟弟子の恋路が面白いのだろうか。

「ほっとけ! 俺は勝手にする! シーザー、お前は突っ込んでくんじゃねーぞッ」

 拗ねたジョセフは一度地団太を踏んでから、俊敏な動きでシーザーから離れると壁から飛び出し、花屋へと向かって行った。そんな彼の子供っぽい行動に、シーザーは肩をすくめて「やれやれ」と呟く。

「何やら面白い事になっているようね」
「リサリサ先生」
「あの坊主がいっちょ前に恋かよ」
「面白そうだな」

 二人の師範代であるロギンスとメッシーナも現れた。
 四人は頷き合うと、ジョセフが最初に身を隠していた壁に隠れる。そして、それぞれ顔を出してトーテムポールのようになりながら、ジョセフの様子をうかがった。
 密かに生暖かい目で見守られているとは露知らず、ジョセフは片思い相手の花売りの少女なまえに話しかけた。

「ハロー、グッモーニーング!」
「あ、JOJO! 今日も来てくれたんだね」
「もっちろんだぜ」
「じゃあ今日も私は、はっぴーうれぴーだね」
「はっぴーうれぴーよろぴくね?」
「はっぴーうれぴーよろぴくね!」

 二人にしか分からないような雰囲気を醸し出しながらはしゃいでいる。案外似たもの同士なのかもしれん。

「なかなかいい雰囲気じゃあないか?」
「そのようだな」

 見守る四人はヒソヒソと話した。
 そうこうしているうちに、ジョセフが手土産のアップルパイをなまえ少女に渡す。すると、甘いものが好きな彼女は目をキラキラと輝かせて喜んでいた。そんな彼女もお礼としてか、ジョセフに花を渡している。

「ほう」
「どうしましたか、リサリサ先生」

 感心したように、意味深に溜め息をついたリサリサに、目敏く気づくシーザーは問う。

「彼女はなかなかいい花を贈るようですよ」
「え?……ああ、なるほど」

 なまえがジョセフに贈った花は『グラジオラス』。花言葉は――『勝利』

「JOJOを取り巻く"試練"を、彼女は感じ取っているのかもしれません」

 花束を贈られて舞い上がっているジョセフを、"師"とは別の意味を含んでいるような温かい目で見つめながらリサリサはサングラスをかけなおし、その場を最初に去って行った。





――――
あとがき
 元気なお花屋の女の子に恋をするジョセフと、ジョセフの危険な運命をどことなく察してしまっている少女の御話?です。
 カッコいいですよね、グラジオラス。もとはラテン語の剣を意味する「グラディウス」がきているらしいですよ。
 折角お花屋さんなので、花言葉でジョセフに「勝利」をおくりたいと思い、かきました^^

 ココア様へ
 遅くなってしまって申し訳ございませんでした! しかも二人ともちょっとしか話していないし、どちらかと言えば周囲が二人の様子を見守っている感じの仕上がりに……!
 拙い作品ですが、受け取っていただければ幸いです。
 リクエストありがとうございました!





2016.04.24(Sun)
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