短編(jojo) | ナノ


 私は今、私の住む町で最も権力のある貴族が主催するパーティに出席していた。女がパーティに出席する理由なんて一つ、未来の伴侶を見つけるためだ。私はそれが嫌で嫌で仕方なくて、何度か仮病を使ってみてはパーティを欠席して父上たちを困らせていた。
 だが、今は違う。何故なら――

「やあなまえ!」
「ジョジョ……ふふっ、こんばんは」

 ノリのいい今流行りの礼服に身を包むジョジョ――本名ジョナサン・ジョースター。あのジョージ・ジョースターさまの御子息さま。初めて彼を見た時、わたしは雷に打たれたような衝撃を、今でも思い出せる。
 ラグビーで鍛えたという逞しい体。圧力さえ感じる巨漢に対して穏やか優しい微笑みと声……ああ、なんて素敵なんでしょう。彼が出席するパーティには私も必ず出席し、彼とたくさんお話しするようにしてからというもの、私が積極的に探しに行かなくても彼から声をかけてくださる事が増えていった。嬉しい。
 ジョジョの服装が素敵だと褒めれば、彼はポッと頬を染めて照れたように微笑んだ。なんてチャーミングなのっ。

「君は――」

 キョロキョロと目線をあちこちに散らすジョジョ。どうかしたのでしょうか。声をかけると、彼は困ったように笑う。しかし、直ぐに意志の強そうな真っ直ぐな目で私を見下ろし、言う。

「今日はとっても素敵だね。それとも、君は毎日素敵なのかな?」
「まあ、ジョジョったら、いけない人」

 私の手をとって、手のひらにキスを落とす。わたし、はしたなくも顔が真っ赤になってしまいました。ジョジョってば本当にいけない人だわ。
 熱を冷まそうと、ジョジョとは別の方向へと視線を投げていると、ふととても煌びやかな雰囲気が目にとまる。ジョジョのご兄弟、ディオさまが、様々なご令嬢の方々に囲まれていた。確かに彼は見目麗しく、学業も素晴らしい成績であると聞きます。しかし、何故でしょうか、私は彼がなにかとてつもなく恐ろしいものに、見えてしまうのです。

「なまえ?」
「あっ、ごっごめんなさいジョジョ、私ったら余所見をしてしまいましたわ」
「ディオが気になるかい? やっぱり彼は、その……凄く煌びやかだから」

 ジョジョは、しゅんと落ち込んだような雰囲気を醸し出す。あの圧倒的な体格から、小さな子犬になってしまったような弱弱しい姿に私の心は乱されてしまう。なんて女心をくすぐるお方なのでしょう。

「違います。彼は、確かに人目を引く容姿ですが――私が見ているのは、ジョジョ、貴方だけです」
「なまえ……――そんな風に言ってもらえるなんて、嬉しいよ。ありがとう」
「どういたしまして、ですわ」

 取って付けたような丁寧語で言うと、ジョジョは笑みをこぼす。

「それに、申し訳ありませんが、私、彼の事が少し苦手なんです」
「えっ……それは、どうしてだい?」
「時々、なのですが、彼がとても怖ろしい方に見えてしまうのです」

 こんな事を言ってしまったら嫌われてしまうだろうか。だってジョジョはディオ様とはとても親しい仲だと聞きます。ラグビーでも名コンビだとか。しかし、ジョジョは私を責めるような言葉を紡ぐことはなく、私の肩をそっと抱いてエスコートし始めた。

「僕も、時々不思議な気分になる。奇妙な違和感を感じることはあるよ」
「……えっ」
「でも、きっと気のせいなんだろう……そう、思いたい」
「ジョジョ……」

 とても暗いお顔をしていた。本当は、彼は気づいているのかもしれない。でも、やっぱり信じたい部分もある。葛藤をしている。
 これ以上、私が踏み入って良い話題ではなさそうです。

「きっとお二人はいいご兄弟です。まるで鏡のような――さあ、しめっぽいお話しはここまでにして、折角のご馳走を堪能いたしましょう! ほら、このデザートなんてどうです? とっても美味しそう」
「……君はとても聡明な女性だ。本当に、素敵だよ」

 明るめに話題を振って話していると、ジョジョは今にも泣き出しそうな顔をして囁くように言った。

「まあ……それは口説いているのかしら」
「うん、そうだよ」

 冗談めかして言うと、はっきりと肯定する声が頭の上から降って来る。思わずジョジョを見上げると、先ほどの泣きそうな顔から一変して、真摯な表情で私を見つめている。

「――だから、もっと君の話を聞きたいな」
「……私も、です。だからジョジョ、貴方の大学生活をお聞かせくださいな」
「勿論さ。でも、君も普段の生活の御話を、僕に聞かせておくれよ」
「ええ、いいですとも。でも不安です。きっとつまらないモノになってしまいます」
「そんな事ないさ。僕にとって、君が何をしてそこで何を感じたのかが重要なんだから」
「まあ……」

 赤くなってしまう両頬に思わず手をあてる。彼は天然さんなのでしょうか。ときどきとっても恥ずかしい事を平然と言ってのけてしまいます。
 恥ずかしくてこの場から逃げたいと思うのですが、肩を抱く彼の逞しい腕の中が心地よくて抜け出せません。この人の腕の中は人をダメにするような安心感があります。魔の巣窟でしょうか。

「では、そうですね――」

 今日までの日々を私は振り返り、そして彼にどこから話そうかと考えるのだった。




――――
あとがき
 う、うぐ、最近ジョナサンが難しくてたまりませぬ。うぐぐ。
 ジョナサンに片思いしており、積極的にアタックしてついに彼の心をロックしたお嬢様の御話です。とても勘のよろしいお方だという設定です*^^*
 甘々な感じ、精一杯だしたつもりなのですが、途中で「甘いってなんだ……?」と甘いがゲシュタルト崩壊しまして難航しておりました、うぐぐ。

 nn様へ
 遅くなってしまいまことに申し訳ございませんでした!
 難産しているのが分かるようなお話しになってすみませんっ。
 宜しければ受け取ってくださいませ!
 リクエストありがとうございました!


2016.04.24(Sun)
さて、何から話そうか

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