短編(jojo) | ナノ


 敵わない恋はしない、だってそれってすごく面倒だから。

 ――そう思っていた時期が私にもありました。
 私の恋愛観を根底から覆してしまうような人に、私はDIOという男を倒す旅に出ることで、出会う事になったのだ。
 その人の名前はジョセフ・ジョースター、69歳。妻子持ち、ついでに17歳の孫もいらっしゃる御方だ。それなのに、若者の恋愛談に混じって場を盛り上げることができちゃう実にユーモアに溢れた御人だ。
 SPW財団にたまたま所属していたスタンド使いの私は、今回、ジョースターさんの娘であるホリィさんの命を救うため、助っ人としてDIOを倒す旅に同行することになった。最初は、どうせただの仕事だと、危なくなったら適当に逃げればいいやと思っていた。
 しかし、一緒に旅をしているうちに――ジョースターさんのチャーミングな笑顔、そして実の娘であるホリィさんの危機を救おうとする強い意志、どこか他の男性とは一線を画す達観した視点に、いつの間にか、惹かれてしまっていた。
 ジョースターさんのお孫さんである承太郎くんは聡い子で、私の気持ちに一発で気づきやがりまして、毎回私がジョースターさんに見惚れる度に白い目でみやがります。なんて可愛くないお孫さんでしょうか。いや、確かに、既に配偶者のいる人にいっぱしの小娘がメロメロになってたらそりゃ面白くないでしょうね。昔は君おじいちゃん子だったと聞くからね――ちなみにこの話はジョースターさんから直接聞いた。

「俺さぁ、なまえの事もっと頭の良い奴だと思ってたぜぇ」
「はぁ? いきなりなんなのさバカナレフ」
「おい変なあだ名つけんじゃあねーよ――だってよー、おめー趣味ワリーぜ、相手どんだけ年上だと思ってんだよ」

 私は現在、ポルナレフと共に行動している。敵スタンドの所為で車がおじゃんになってしまったため、この町で新たに旅の足になるものを探しているのだ。主にジョースターさんと承太郎くん、花京院くんが足になるものを調達に向かい、私とポルナレフで食料やらなんやらの確保に分かれた。そして今は無事に旅に必要な用品を一通りそろえたので、他の三人が戻って来るまで彼と待っているのである。
 因みに、自称【愛の伝道師】であるポルナレフは、私の気持ちを理解している、らしい。くそ面倒な奴にばれたと思う。花京院くんだって目を苦笑いしながらも目をつぶってくれてるのに、コイツはズケズケと承太郎君並に、いや彼以上に私の胸にグサッとくることを言ってくるのだ。おい、乙女に対して不躾だぞこの野郎。

「愛に歳の差はいらないんだよ……っていうか、別に配偶者のスージーQさんから奪おうとは微塵も思ってないんだからいいじゃない、想ってるだけなんだからさぁ」
「だぁーかぁーらぁー、それが不毛だっつーの! 無理って分かってんなら諦めりゃ良いじゃあねえか」
「簡単に諦められたら苦労しねえっつの。別に旅が終わるまでだって決めてんだから好きにさせてよぉー、いちいち煩いなァ」

 自分は現地できゃわいい女の子が居たらすぐに口説いて直ぐに振られる癖に。なんなんだよ。

「おーい、二人ともー」
「あっ、ジョースターさぁあん!」

 きゃーっ、ジョースターさんだ! やべえ素で乙女になっちまう。
 ジョースターさんはニコニコ笑顔を浮かべながら片手を上げて近づいてきた。ああっなんて素敵なんだろう。

「お疲れ様です、車はチャーターできましたか?」
「おおっ、なんとかのう。四輪駆動じゃから険しい道もなんのそのじゃ」
「デコボコ道もまだ快適に走れるんですねっ」
「おい、なまえ、俺らへの労いの言葉はなしか」
「おや、承太郎君、花京院くんも……すいません今気づきました」
「てめぇ」
「イヒヒッ、承太郎〜お前ワシより存在感ないのう」
「喧しいぜジジイ」
「まあまあ落ち着くんだJOJO」

 青筋を立てている承太郎くんを花京院君が宥める。この光景は最近日常化してきたようなもんだ。大抵私がジョースターさんしか見えていないから他が――主に承太郎君とポルナレフが――ないがしろになってしまって、怒らせてしまい、優しい花京院君かアブドゥルさん、素敵チャーミングなジョースターさんが仲裁にはいる。
 私たちはジョースターさんたちが確保した車に乗り込み、出発した。


 * * *


 現在、私は高度3000メートルくらいから落下している。何を言っているのか分からないだろうが、大丈夫、私も状況がよくわからない。
 移動中、DIOが送り込んできた刺客、敵のスタンド使いの攻撃を、ジョースターさんが受けそうになったから、体が咄嗟に動いて、彼を庇い、代わりに私がうけた所までは覚えている。敵スタンドの口に頭からぱっくり食われて真っ暗な世界に行ってしまったところまでは、覚えているんだが、いかんせん、その後の記憶があいまいだ。
 食われたのならば内部から破壊してまえ、とど根性精神を見せて、私のスタンドで手あたり次第攻撃してみたのはいいものの、なんだか中で渦みたいなのに巻き込まれ――もしかしたら、あれはスタンドの消化器官(あるかは不明だけど)だったのかもしれない――、やべえ私の人生ジ・エンドだわなんて思っていたら、急に体が押し流されて、突然の眩しさに目がくらんで、光になれたと思えば、まっさかさーまーにー、降りていまーす。あ、古いですかこのネタ。

「うそぉおおおおおおお!?」

 私のスタンドは落下の衝撃に耐えられるような強靭なパワーはもっていない。せいぜい林檎を片手でつぶせるくらいだ。いや、力としては十分かもしれないけど、この状況を打破するには不十分ね。
 っていうか、なんか周囲にガラクタとかが一緒に落下してるんだけど。もしかして、あのスタンドっていろんなものを飲み込む能力だったのかもしれないな。ジョースターさんたちがなんとか吐き出させてくれたのかも。
 まあ、この状況を何とかしないと、スタンドから脱出できたとしても、確実に死にますわな。

「ヘルゥウウウプッ!」

 半分泣きながら助けを求める。私の落下地点付近には、ジョースターさん、承太郎君、花京院君、ポルナレフがいた。各々スタンドを出して、私を受け止めてくれる体勢をとっていた。

「なまえー!」
「ジョースターさんっ」

 【ハーミット・パープル】で受け止めてくれるのだろうか。彼はスタンドの蔓を私へと伸ばしていた。それは私の身体に巻き付く。

「僕も手伝います!」

 【ハイエロファント・グリーン】での触手もジョースターさんの蔓を補助するように巻き付いた。これでぐっと落下の勢いが殺される。
 承太郎君とポルナレフの【スター・プラチナ】と【シルバー・チャリオッツ】の2体が、私の周囲にある瓦礫や鉄骨、その他の邪魔なガラクタたちをぶっ飛ばした。

「わっぷっ!」

 そして、私は――ジョースターさんの逞しい胸にダイブしたのであった。

「わーん、ジョースターさーん」
「おーよしよし、怖かったじゃろ〜」
「助けでぐだざり、ありがどうございばずぅ〜〜〜〜っ」

 これが役得というやつか。ジョースターさんに頭を撫でこ撫でこされている。とっても幸せです。他の人たちが呆れて見ているだろうけれど私は幸せなので気にしませんフハハハハ!

「みんなありがとうございましたー」
「ジョースターさんの時みたいにもっと感動した感じでいってくれよぉ」
「え?」
「『何言ってんのお前』っつーそのおとぼけた感じ! くそ!」
「ふははははっ」
「偉そうにいうな」
「いてっ」

 ポルナレフがぎゃんぎゃん煩いので適当に偉ぶってたら、後ろから承太郎くんに頭を小突かれてしまった。

「車は無事みたいです。旅を急ぎましょう」

 花京院くんはさも何事もなかったかのように旅支度を進めていた。なんて変り身の早さだろう。

「無事でよかったわい。ワシを庇ってスタンドに食われた時は肝が冷えたぞ。もう二度とあんな無茶はするんじゃあない、いいかなまえ?」
「はぁーい」

 軽いジョースターさんの忠告、そして頭ぽんを貰う。ジョースターさんは花京院君に続いて車に乗り込んだ。

「はぁ、やっぱり素敵だ……いてっ」
「やれやれだぜ」
「おい今なぜ同時に小突いた。めちゃくちゃ痛いんだけど!」
「てめーの心に聞いてみな」
「承太郎の言う通りだぜ」

 ジョースターさんに見惚れていると、また背後から、しかも今度は二つぶん小突かれた。とっても痛い。承太郎くんとポルナレフは「やれやれ」と肩を竦めて車に乗り込んだ。私も慌てて車に乗り込む。
 こうして、旅はまだまだ続くのだった。





―――――
あとがき

 彼女は最終決戦まで生き残り、ポルナレフ、アブドゥルさん、イギーと共に館に乗り込み、ポルナレフを庇って「コイツは真っ直ぐすぎる所があったけれど、強くてイイ女だった」とポルナレフに印象付けて、イギーと共に死ぬという所まで妄想してしまった。流石にそこまで書くと主人公が死んじゃうお話しになってしまうので、ここで止めておくことにしました。
 死ぬまで「貴方の事を愛しています」と言えない主人公だったので、今回のタイトルが「もし、私が"貴方を愛しています"と言えたなら...」という英語を過去完了形にして『ありえない事』を強調したタイトルにしてみました。ちょっと暗かったかなぁ。

ぽよ様へ
 三部ジョセフが好きな年下の女の子という初めての題材の挑戦に緊張しましたが、いかがでしょうか。
 ポルナレフと承太郎さんとの絡みの方が多かったかもしれないところが否めませんが……う、ぐ、ぐ。
 遅くなって申し訳ありません、拙品ですが、どうかお受け取り下さいませ!
 リクエストありがとうございました!





更新日 2016.02.20(Sat)
もし、私が"貴方を愛しています"と言えたなら...

[ prev / next ]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -