短編(jojo) | ナノ




 ふわふわなボリュームのあるブロンドの髪、華奢な手足に比例するかのように小さな体格、リスを連想させるくりくりとした大きな瞳はそこに映るもの全てに好奇心を向けてキラキラ輝いている。しかし、小さい顔に不釣り合いなほどの大きな眼鏡の所為でその爛々とした宝石のように輝く瞳は誰の目にもとまらない。
 彼女の名前はなまえ、よく中学生と見間違えられるがこう見えてしがない大学生の一人である。
 趣味は愛しいペットのネコを可愛がること、大好物はあまーいチョコレートである。ちなみに苦手なものは辛いモノ。そして、コンプレックスは己の小さな身長であった。
 彼女は、己の身長の低さを指摘されると憤慨する。それはもう烈火のごとくだ。そして、彼女のその悩みを助長する人物が一人――

「やあ、おはようなまえ。今日も可愛らしいね!」

 身長195センチメートル、体重105キロの大きな体躯を持つ屈強な戦士かと見紛うような見事なる肉体美を持つこの男。

「ジョナサン〜」
「研究は順調かい?」
「まあまあってところかな」

 男の名はジョナサン・ジョースター。ジョースター家の息子の『一人』である。厳つい体躯とは違い、物腰柔らかで柔和な笑みを浮かべる好青年である。
 そんな彼と小さななまえが肩を並べれば、身長の差は歴然。むしろ、なまえのミニマムサイズが余計に強調されるのだ。彼女が進んでジョナサンの隣に立つという事はそれすなわち、コンプレックスによる自虐にしか見えない。しかし、彼女は自分のコンプレックスが気になる一方で、優しいジョナサンの傍を離れられないでいるのであった。
 所属する研究室に現れた彼を見た途端に立ち上がるとすぐさま駆け寄り、小さな体を大いに使って飛びつく。さながら、子供が親にひっつくコアラのようである。
 そんな小さな彼女をまるで天使であるかのようにジョナサンは可愛がるのである。

「相変わらず小さくて可愛いよなまえ!」

 デレ〜っとした顔で、小さい彼女を見下ろしながら言うジョナサン。そんな彼になまえの表情が石化したように固まるのは見えないらしい。彼女はぶすっと不貞腐れた顔をするとジョナサンの腕から抜け出そうとする。しかし、ジョナサンはラグビー部の中でも屈強な体躯を持つ。華奢で身体も小さいなまえではもぞもぞとただ動いているだけのダメージを与える事しかできないのだ。

「ど、どうしたんだい? あ、もしかして計算のし過ぎでお腹が減ったのかい?」

 なにか勘違いしているジョナサンはポケットをあさるとキャンディーを一つ取り出す。

「今日も研究お疲れ。といってもまだ一日が始まったばかりだけどね」

 袋から取り出してコロリとなまえの小さな口にキャンディーを放り込む。彼女の口いっぱいに広がったのは甘酸っぱいレモン味だった。
 甘いモノ好きな彼女はその一個のレモンキャンディーで大分機嫌を良くした、単純な奴だ。しかし、ジョナサンはそんな単純な面も可愛いと思っている様で、頬の緩みをさらに悪化させていった。
 なまえとジョナサンは同じ研究室に所属している。彼らはそれぞれの研究テーマを持っており、目標は似ているがその目標に到達するための方法が異なっていた。
 なまえは以外にも『統計学』からの視点から、ジョナサンは実際の地に訪れての聞き込み調査や文献調査などが主だ。
 二人は何もかもが違った凸凹コンビとして知られている。大小の差が大幅にある見た目もあるが、彼らの得意分野がそれぞれの苦手分野でもあったのだ。

「ねえジョナサンっ、クッキーがもうなくなってしまったわ! わたし、クッキーがないと調子が出ないのよぉッ」
「ああ、大丈夫さ。そんなこともあろうかと、既に仕入れてある。だから今は講義を受けに行こう」
「流石だわっ! ええ勿論よッ」

 目を爛々とさせてジョナサンを見上げる。そんな彼女の眼鏡の奥に隠れた輝きは、もちろんちゃんとジョナサンに届いていた。彼は朗らかな笑みを浮かべると小さいなまえを腕に抱える。なまえはジョナサンの腕に腰を下ろし、彼の逞しい首に手を回すとそのままごく普通にお喋りを開始した。

「ジョォ〜ジョォ〜……」

 視線を集めながら廊下をノシノシと闊歩するジョナサン・ジョースターとそんな彼に運ばれるなまえの眼前に現れたのは、秀麗な美貌と眩いブロンドの髪を持つ美青年であった。鋭い美貌を持つ青年は、せっかく整った口元を歪に引くつかせて眉をぴくぴくとさせていた。ジョナサン程ではないものの、屈強な体躯を持ち、ジョナサンの力強さが持たないしなやかさを持った肉体美だ。
 そんな美青年の恐ろしい表情を見ても、ジョナサンとなまえは怖気づくどころかパァと表情を輝かせる。

「ディオ!」

 二人とも、口をそろえて美青年の事を『ディオ』と呼んだ。
 美青年の名は『ディオ・ブランドー』といい、実はジョナサンとは義兄弟である。とある事情でジョースター家の養子としてやってきたのだ。
 現在論文で優秀な成績を治めつつあるジョナサンに対し、ディオは本大学の学業生成ナンバー1であった。勿論、それはスポーツに置いても同様であった。
 そんなディオは、真っ白でしなやかな人差し指をジョナサンに向けた。

「ジョジョォ……貴様またそのように悪目立ちしよって……なまえもなまえだ。いい加減ジョジョに頼り切りになるその悪癖を治せ!」
「ヤダー」
「おい」
「まあまあディオ、ボクは好きでやって――」
「大体、貴様がコイツを甘やかすからこのような腑抜けになるのだ!」
「ディオ、あまり怒るとこめかみの血管がプッツンして病院送りになるわよ」
「なまえ……きっさまァ……」
「つーん」

 頬を膨らませてジョナサンの腕にまわす腕の力を強める。少々苦しいのではないかと思われるが、ジョナサンはそんな素振りを見せることなく、むしろもっと顔の筋肉を緩ませてだらしのない表情になっていった。
 眼前の光景に怒りボルテージを上げているのはディオのみ。彼は天井を仰いで目を大きな手で押さえるとブルブルと体を震わせた。何を言っても聞かぬ阿呆どもめ……そんな悪態を胸の内ですると、彼は大きなため息をついた。

「ジョナサン、わたしちょっと用事思い出したわ」

 そう言って、ぴょーんとジョナサンから降りると、彼女はてとてとと小ぶりな歩幅で駆けてどこかへ行ってしまった。そんな彼女の後姿をだらしない笑みを浮かべて見送ったジョナサンは、その表情のままディオに向き直った。

「ああ、なんて可愛いんだ。見たかいディオ! 小さな足で駆けてゆくなまえの愛らしい後ろ姿を!」
「……」
「あんな小さな歩幅で大丈夫かなぁ、どこかで躓いて転んでしまうんじゃあないか心配だよ」
「……はぁ」

 こいつはもう末期だ。そうディオは確信した。しかし、彼はそれでも義兄弟と友人のよしみで二人に説教するのをやめないのだろう。彼はため息をつきながらその場を去って行った。


 そうして、その日の昼食――

「ジョジョッ、なまえッ、普通にランチをとれんのか!」
「普通よ?」
「普通だよ?」

 ジョナサンの膝に乗ってサンドウィッチを頬張るなまえとそんな彼女の世話を甲斐甲斐しくしながら表情筋をゆるゆるにする彼が、ディオに叱られているのを大学のとある庭で目撃されたとか。





――――
あとがき
 友情出演ディオ・ブランドー君。現パロということで、仲良しなディオ君にしてみました(意味不明)
 因みにディオは二人とは別の研究室設定であります。

 ハルカ様、遅くなってしまい大変申し訳ございませんでしたッ。
 ふわふわヒロインということでしたが、フワフワ感よりもぼーっとしたような感じが出てしまっていて……申し訳ないです(技量不足ェ……)
 宜しければ受け取って下さいませ!
 リクエストありがとうございました!





更新日 2014.06.21(Sat)
可愛い子はとことん甘やかせ

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