鉄壁の少女 | ナノ

16-4



「もうね、私感激しちゃったよ! あんなカッコイイ人と一緒にお茶出来たなんてさ!」
「ふぅ〜ん」
「あと、見せて貰った娘さんの写真が可愛いのなんのっ! あんな妹が欲しいと思ったくらいさ!」
「良かったじゃあねーか〜〜」
「うん!」

 昨日、承太郎さんとお茶した事を仗助君に報告した。見せて貰った可愛い娘さんと綺麗な奥さんの写真――その時の承太郎さんの表情といったら普段絶対に見せないような穏やかな表情だった。まさに父親と夫の顔だね!――の事や、食べさせてもらったパフェが美味しかった事などを話していると、その興奮が蘇ってしまったのか、私の話は段々とヒートアップしてしまった。
 なんとなく、仗助君の機嫌が悪そうだったので、そこで漸く私がマシンガントークの如く会話を展開していた事に気づく。熱くなってドクドクと沸騰するように脈動する心臓をおさえる為、胸に手を当ててひとまず落ち着いた。

「それ、デートつーんじゃあねーっスかあ〜〜?」
「え、で、デート?」

 唐突に放たれた仗助君の言葉に、私は狼狽してしまった。だって、相手は既婚者である。

「でっでもさ、ちょっと二人でお茶しただけだよ?」
「それでも立派なデートだぜ〜〜」
「そうなの?」
「そうなの」

 男女の二人が仲良く(?)出掛けてお茶する事が仗助君にとってはデートとなるらしい。となると――

「そうなると、私の人生初のデートの相手は仗助君って事になるね」
「……は?」

 何気なく音にされた私の言葉に、仗助君は驚いたのか足を止めて固まってしまっている。どういう意味か分かっていないみたいだ。

「ほら、色々理由があって中学生の時は全然遊べなかったしさ。偶々あった『あの日』に仗助君と一緒に商店街を回ったでしょ? あれが私の初めてのデートだったんだよ」

 いやあ、私運がいいね。短い人間の人生の内で、二回もカッコイイ人とデートに行けたんだし。そのうちの一人はその……私の思い人、だし。うっうふ、ウフフフ、嬉しすぎておかしな笑が出てきそうだよ。
 私の初めては仗助君だ、と言うと目の前で硬直している彼は顔をみるみる真っ赤にして行き「そういう事を大声で言うな!」と私よりも明らかに大きい声で返されてしまった。そんなに恥ずかしい事なのかい?

「……なあ、桔梗」
「ん?」

 何が恥ずかしかったのかと考えている私を、仗助君が呼ぶ。まあ、今は彼しかいないし。
 彼を振り返ると、彼の顔は少し赤く、そして全く私がいる所とは逆の方を向いていた。彼の見ている方に顔を向けてもそこには特に目立った物はなかった。もう一度彼に向き直ると今度は、彼は自分の頬をポリポリと掻きながら何か言いたそうにしている。

「俺よォ〜」
「うん」

 言いにくそうにしている事から、これから何か大事な事を打ち明けようとしているのだろ。なんだろうか、吉良さんの情報? それとも私の打たれた『矢』の事かな?

「す……」
「す?」
「す、す……」

 仗助君は、腹をくくったかのような表情になると、すまいを正して深呼吸をし――

「す――」
「お〜い! 仗助ェ、桔梗――っ!」
「だあああああっ! 《クレイジー・ダイアモンド》ォオオオオ――ッ!!」

 後ろからやってきた億泰君が私達の名前を呼んで駆け寄ってくると、なんと突然仗助君が怒って彼の《スタンド》である《クレイジー・ダイアモンド》を出現。その拳を真っ直ぐ億泰君へと向けた。とっさに億泰君も《ザ・ハンド》で対抗する。

「どうしてテメーはいつもこう……タイミングがワリーんだ! 狙ってんのかッコラァ――ッ!」
「タイミングゥ〜〜? 一体何のことだよ桔梗!」
「……」

 いや、私にもサッパリなのでコメントのしようがないです。
 億泰君と共に来た康一君に聞いてみると、彼は何故か仗助君に「ごめん」としか答えなかった。何故だ、何故なんだ康一君!
 本日も私達は元気です。


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