キャンドルの灯りを頼りに本を広げる。
赤い背表紙に金の文字で【初級魔法の応用と原理】と書かれたその本は何やらこ難しく、初級魔法と聞いて!とワクワクしていた私の期待をいともたやすく打ち砕いた。
本も人と同じで、タイトルや見た目などで選り好んではいけないんだなあと、とても実感させられる。

古く黄ばんだページをめくりながら、一応文字の羅列を目で追ってみるけれど、ほとんど理解が出来ない。まあ、ここにあるのはヴォルデモートさんが選んだ本なのだろうから簡単なものなんて無いのがデフォ、ですよねえ。
甘く見てた私がいけなかった。あーあ。

あきらめて本を棚に戻し、やわらかいソファーにもたれ掛かる。
血のようにあかい真紅のこれも、普段ヴォルデモートさんが使っているのだと思うと普通のソファーより妙に愛しく感じられる。
まあ、この世界に来るまで、ヴォルデモートさんは個人的にファンでしたし。

純血思想なんて持っていないけれど、ヴォルデモートさんという人間には、とても惹かれる。
ついでに。
色んな人は、ヴォルデモートさんを、闇に染まっていると言っていたけれど、逆もアリなんじゃないかなって密かにずっと思っていた。

例えば他の人達が闇に染まっているとして、ヴォルデモートさんはその中できらきら光っているんじゃないかなって。
ダンブルドア先生も、そんな感じなのではと思う。


力を持つ者。
光を持つ者。
だから、凡人は彼等のような超人に憧れ惹かれ、崇拝しまた集う。


私はいたって普通の美少女だから、そんなに頭がいいって訳でもないけれど、すこし考えて、それで一つだけ分かった。
ダンブルドア先生は好かれて、ヴォルデモートさんは大衆に嫌われているけれど(一部には好かれてる)、周囲には必ず、いつだって人が集まる。

ダンブルドア先生の学生時代は知らないけどでも、ヴォルデモートさんの学生時代だってそうだった。
普通のよく出来た美少年として彼に惹かれる人も居れば、内に秘める闇に惹かれた人達も居た、そういう人達が今現在死喰い人になっている可能性も高いのでしょう。

ようするにどちらも人気者ってことですね私って頭いい。


「お前の頭の出来は置いておくとして、面白い考えではある」
「ですよねぇ、ってぴぎゃああああああああ」

いつの間にか、ヴォルデモートさんが本棚に背をもたれて私を見下ろしていた。
前にもこんなことがあったよ……と脱力しつつも、呼吸を整える。

「俺様が光だなどと、そんな事を考えるのはお前だけだろうな」

そう言って、凡人である私をあざけり哂う、みんなのアイドル闇の帝王。
少し腹が立ったので。

「あのー、非常に言い難いのですけれどずっと前から思ってて……、もう大人なんですしその一人称は、ちょっと……」

言いながらわざとらしくも、苦笑を浮かべてみせる。
一方ヴォルデモートさんは、私の言葉にこれでもかと言うほどに眉を寄せた。


「…………夕食の用意が出来た。今晩は私と共に食べろ」


うん、まあ、お約束ですよね。









黒い暗い闇の中、貴方はそれはそれは奇麗に光るのです。
   


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