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ジョバンニの独り言




ろこさま宅の非日常設定をお借りしました。


(ルキ→リン?)




夢を見た。
頭は寝起き独特にぼうともやがかっていた。
頭の中でちかちかと一枚絵のように動かないリン。
AM4:00
デジタル時計は誰も見てないのに健気にも緑色の文字を浮かび上がらせていた。
夢を見た。
いや、別にそれ事態はなんら珍しいことではない。人間というものは睡眠中、必然的に夢を見るものだ。
そうではなく、僕が着目したいのは夢の内容なのだ。


リンが帰る夢をみたんだ。


帰る、正規の元に。
華やかで確かな足場のある高い高い場所。
もともと僕はリンの歌声を聞いたことなかったが、夢の中の僕に歌を聴かせていた。
しかし夢の中で聴いた彼女の歌声は全くといって良いほど思い出せない。だけど力強く鋭利な高音はガラスの破片のようだ、そんな味気ない在り来たりな感想は無意味にも脳内に記録されていた。


もともとリンは正規。
治る確率はゼロではない限り、歌えるようになる可能性はゼロにはならない。そして、ここを離れる確率も当たり前にゼロではない。
棄てられる可能性も、勿論。



「……ああ」

漏れた声は当たり前のように誰にも拾われない。暗闇にすら溶けず、辺りに浮遊しているように思えた。
きれいにきれいに歌ったリン。
まるで女神、そんな大袈裟な形容すら謙遜せずに付けられるだろうその姿を実際に見てみたいとも思う。そして絶対に見たくないとも思うんだよ。いつのまに僕はリンに執着していたんだ。
最初はあんなに嫌いだったのに、避けてたのに。
きれいな女神は未だに頭の中をちかちかと反芻している。
ちかちかちかちか。
煩わしいのに、とてもきれいなのだ。
でもどこか高い境地にリンが行ってしまうようなあの感覚。
ふとアカイトが買ってくれた絵本を思い出した。
銀河を走る鉄道で、ひとりだけ上へいってしまうカムパネラ。
彼女は彼にそっくりだ。
そうなるぐらいなら、うたえなくていい。
でも、うたうかのじょをみてみたいとも、とてもおもうんだ。



小さく寝返りを打つ。
今日はもう、眠れない。




(でもどうか、ぼくをすてないで)



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