小説 | ナノ
 

良くも悪くも愛まみれ




「恋愛の定義?」

「ああ」



恋愛に定義があるなんとするなら、それは何なのだろう。
好きとか愛してるとか語彙が貧しく陳腐だ。
もう少し語彙をに付けてもっと理屈を付けてくれないと困るんだよ。
僕は、そんな短い言葉で表されても不安だ。
もっと長ったらしく、その声で、その口で語ってほしい。




「うーん、それは人それぞれじゃ無いの?」

「じゃあお前ので」

「うーんそうだなあ、ルキくんがそこにいて、“わあルキくんだー!”ってぱぁあなること、終了。」

「ごめん日本語に訳して」


本気でわからない。
だれかリン語に詳しい奴はいないか。
ああ、一応僕にはリン和辞典(漢和辞典からの造語)の脳内辞書がある筈なんだけど、今回はどうも。


「だから、つまり好きな人がいると、ついつい構いたい!構ってほしい!て思うこと……みたいな」

「……なるほど簡単だな」


語彙は少ないリンの簡単な言葉。なるほど、構われるのも構うのも今度から積極的にしようと思う。それでリンが愛されると感じられるなら。



「ルキくんのは?」「は?」

「あるんでしょ」



自分のなんて思いつかない、即興でつくるしかないのか。
頭が捻れるほどに捻る



「感情を支配されること」

「……またえらい、」


リンが苦笑する。
僕は至ってまじめな顔で続ける。



「その人の言動に一喜一憂なんて、考えてみればあほくさいよな、って。」

「うっわー、でも恋してるときは周りが見えないからたしかにそーかも……」

「色恋は理性ではできないし」



リンが抱きついてきた。
ぎゅーぎゅー。
いつもより力が強くて少しだけ痛い。
小さくて華奢なうではしなやかに僕に巻き付ける。
きれいだなあ、と思った。



「確かに、私はルキくんのことになると、理性が利かない」


ぐらりと視界が変わる。
数秒の油断をつかれて僕の体はリンの下にいて馬乗りに乗られていた。
視界には天井とリンの平らな胸部と顔。
押し倒されたとき頭をうったのか、若干いたい。


「変態が」



呟いて気づく、どうしよう、これじゃ拒否にならない。受け身だ。
拒絶する気がないのがバレるじゃないか。最近の僕は随分乱されてるなあと思った。




「さて、ルキくんの理性を溶かしますか」



ここで、もう溶けてるよ、って言ったらどうなるんだろう。








タイトル 告別様



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