カイメイ
寝苦しさに目を覚ました。だがしかし醒めない。ぼやける視界と覆い被さるヤツに私はため息。
「起きてよ」
掠れた声が闇に溶ける。
アイツの耳に渡る前に溶けてしまったようで、アイツはまだ私の上でぐーすかと寝ていた。
腹が立って、どこか体の部位を蹴ってやろうかと思ったが、醒めない思考回路がそれを拒絶していた。
「カイト起きなさい」
「やだね、寝てるし、オレ。」
起きてるじゃないか。
イライラしてカイトの青髪をひっつかんだ。
引きちぎってやろうか。
重たいわ、それにちょっと息苦しい。これはなんの罰ゲームかしら。
「めーちゃんの髪が好き」
「そりゃありがとう」
「めーちゃんのかっこいいところが好き」
「そう」
適当に聞き流す。
私の瞼はお互いを引き寄せあっているのに、眠たいのに、こいつは私のことなんて露知らず。
本当、腹がたつわ。
いまこの時、私はぼんやりとした眠気のなかで泳ぐ魚みたい。「もっともっとオレを求めてくればいいのに」
そんなの、私の高いプライドではそれはかなわないわよ。
別のかわいい女の子を捕まえなさい。……そう言おうと思ったけど止めた。
だって悲しいじゃない、こいつが別の女に食われるなんて。
「おやすみ、めーちゃん」
やつの眠気を誘う低い声を最後に、睡眠の波に沈んでいった。
end
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