雪は降り続く。
しんしん、こんこん。
様々な擬音を頭の中で浮かべるが、やっぱりびゅーびゅーが一番あう。
あんまり雪の降らない僕たちの地域では、だいたい積もると幼児がはしゃいでいる。
……まあそんななかで、僕をほっといていい年こいて(そこまでいってないか)、雪と戯れる馬鹿が一人。
「お前まさか脳ミソないの?」
皮肉る。
「ルキくんから殴られすぎて脳細胞が死滅しました」
皮肉を更に皮肉で返された。
やわらかい、金髪にあっちこっちに雪が散っていて、どうしようもなく殴りたくなる。
きれいな髪だ。とか好きだ。とか言えたらいいのに。
「手……じんじんする」
雪だるまを製作していた手がとまり、自分の手を眺める。
白いからか、赤みがよく目立ち息を飲んだ。
最近、いろいろおかしいのだ。
リンの白い肌に赤いモノがあると映えて、舐めたくなる。変態のようだ。
最後には、ウルサイと揶揄していた甲高い声を聞きながら殺されるなら、酷く至福だろう、という明ら末期すぎる考え。
「ルーキくん」ぼうとしていたら、穿いていたブーツを投げてきた。
反射的にリン姿を見て溜め息が出た。
「……風邪ひくよ」
リンは靴下を脱ぎ、素足を雪に沈めていた。
白い雪の中に白いリンの素足は、今にも同化しそうで怖かった。
そしてリンのスカートからむき出しの白い足を指先から股までゆっくりと見ていく。
「ルキくん見て、ゆきだるまだよ」
「ぶっさいくだね」
白い白い。白銀の世界に同化してしまいそうな彼女のふくらはぎにある紫の痣。
それは明らかに白い世界では異質で、異常だった。
それを自分がつけたものと思うと、体が恍惚に震えた。
リンは相変わらず雪の中。リンの腰くらいの雪だるまと並んで微笑んでいる。
リンの肌も服も今にも同化しそうなほど真っ白でよごれのひとつもないだけど、僕が蹴ったと思われる痣だけは僕の欲望の象徴として、純白の中で醜く美しく映えていた。
「リン、そろそろ帰ろうよ」
これ以上見ていたら、リンを殺しそうだ。
DVじゃない……と思う。
タイトル 空想アリア様
前へ 次へ