■ 独占欲

「姜麗…」

耳元で囁かれる声。

その吐息に身震いする。

『慶舎…様』

震えながらその人物を見る。

なぜ私はこの人物…慶舎様から見下ろされているのだろう。

そして耳元で囁かれているのだろう。

「姜麗、お前は李牧様のことを愛しているのか」

きっと今の私の表情は困惑しているだろう。

慶舎様はそんな私の耳元に口を近づける。

「黙るということは、肯定ということか」

『ち、違いますっ』

まるで獲物を狙う蜘蛛のような、捕食者の目で私を見つめる慶舎様。

耳元に口を近づけると私の耳朶に噛み付く。

甘噛みされ、私の身体にはぞくぞくとした感覚が広がる。

これが快感の刺激として私の身体に届いているなどと信じたくはなかった。

「姜麗…」

何度も何度も耳を噛む慶舎。

そして舌を出し、私の耳を舐める。

『ひっ……』

思わず声が出てしまい、私は咄嗟に口を抑えた。

抑えても漏れる声。

その声に気分を良くしたのか、慶舎は私の袷に手を滑り込ませた。

咄嗟のことで抵抗できず、私は身を固くさせ、快感に耐える。

『うっ、ふっ……』

唇を噛み締め、耳の刺激、胸の刺激を必死に耐え忍ぶ。

手を抑えられていないことが唯一の救いだろう。

手で口を覆い、声が外に漏れないように堪える。

『慶舎……様っ、おやめを』

必死に慶舎の胸板を押し、慶舎自身を押しのけようとするが、相手は男。

女である私が押し返せるわけもなかった。

すす、ともう片方の手が私の顎を掴み、耳を攻めていた口が私の口を犯す。

ねとりとした生暖かい感触が私の口の中に入る。

いわゆる口付けだ。

それはもちろん知っていたものの、今までこんなに深い口付けをしたことは無い。

息ができず、私はがくりと腰を落とした。

咄嗟に私の腰を支えて引き寄せる慶舎。

そして噛みつくように深く私の口内に舌を入れ込む。

舌が別の生き物のようだ。

ぐねぐねとうごくそれを私は涙目になりながら、必死に堪えた。

時には歯列をなぞられ、時には私の舌を口で吸い。

同じ刺激は与えられなかった。

それゆえに私の下腹部に微かな違和感を感じるのは当然のことだった。

それを悟られないように、私は我慢して、必死に脚と脚を擦り合わせた。

しかし慶舎はそんな私の様子を見て察したのか、腰に回していた片手を下腹部へと運ぶ。

私は必死になってその手を遮る。

慶舎は私の下腹部に触れることを諦めたようだった。

しかし、それは間違いだった。

慶舎はあろうことか、私を横抱きにして、寝台まで運び始めたのだ。

腕足をばたつかせながら必死に抗おうとするが、慶舎の無表情は変わらない。

『慶舎様っ……あっ』

寝台に落とされた私に覆いかぶさる慶舎様。

私はごくりと唾を飲み込む。

慶舎様は再度耳元に口を寄せ、呟いた。


「李牧様に渡すくらいなら、私が」



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