■ 甘い口付けを

目が覚める。

手に触れる温もり。

少し遠くにあるそれを掻き抱くように、私は自らの手を伸ばした。

胸元に引き寄せると少し身じろぐように私に擦り寄ってくるその温もり。

それを心から愛おしく思いながら、肩から滑り落ちた掛布をかけてやる。

『んぅ……』

背中に手を回し、その頭をこちらに向ける。

少し開かれた無防備な唇。

昨晩はその口で何度名を呼ばれただろうか。

今ここで起こしてやろうか。

そして私の名を呼んで欲しい。

その衝動が沸沸と湧き上がるが、その寝顔をまだ独占したいと思う相反した心。

「…」

私は起こすことをせずに、その小さな口に自分の口を寄せた。

最初は触れるだけのものを。

離した時に少し顔が紅潮したように見えるのは私の願望のせいだろうか。

その色姿にさらに欲を煽られ、私はその口に噛み付くように口付けた。

その無防備な口の中に舌をねじ込み、口内を犯すように堪能する。

さすがに息が上がってきたようで、腕の中でゆっくりと目を覚ます。

『紀彗……さま?』

口からはどちらかか分からない唾液が垂れる。

それを舐め取り、そのままさらに啄むように口をつける。

驚いていたような姜麗だったが、すぐにとろんとした表情になり、私の舌に自らの舌を絡ませてくる。

情事をしている訳でもないのに響く水音。

それが気にならないくらい、私達は夢中だった。

何度もなんども、お互いを求めるような深い口付け。

先に音をあげたのは姜麗だった。

『紀彗様っ、そろそろ…』

肩で息をしながら、私の胸板を押し返そうとする姜麗。

私は最後に額に軽く唇を寄せると、姜麗の髪をかきあげた。

「すまぬな、昨晩のことは大事ないか」

『っはい…』

昨晩のこと、という言葉で行為を思い出したのか頬を染め顔を隠すように胸に顔を寄せる姜麗。

「そのような愛らしい反応をされると、我慢出来なくなるな」

びくりと肩を揺らす姜麗。

冗談だ、というようにさらに抱き寄せる。

すると、姜麗は少し目線を上にあげ、潤んだ瞳を私に向けた。

『紀彗様、お慕いしております』

そして恥ずかしそうに顔を下に向けた。

ごくりと、自然と唾を飲み込んでしまうほどに色気のあるその表情と愛らしさに、私は寝台の中で背中を丸める。

顔を出来るだけ寄せ、姜麗の口を奪う。

抵抗せずに受け入れる姜麗を大切に、愛おしく思いながら、何度も何度も口付けをした。






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