■ うちの許嫁は可愛い

今日は俺の許嫁である姜麗とともに街に出ている。

俺が長く都に滞在するのは久々のことで、姜麗も内心では嬉しがっていると思う。

そう、内心ではね。

『蒙恬が帰ってこなくても私寂しくなんかないんだから!』

「はは、そうだね。姜麗は強いなー」

姜麗は俺が長く滞在できると分かると、ぱぁっとわかりやすく顔を輝かせた。

そのあと、恥ずかしそうに俯き、いつものように強がりを言うのだ。

強がりということは重々分かっている。

しかし、そんな姜麗が可愛くてついつい乗ってしまうんだ。

「なにか欲しいものある?」

『別にっ!なにもないわよ』

少し頬をふくらませている姜麗を横目に、俺は露天商が売っている様々なものに目を移した。

姜麗はむすっとしているが、目はちらちらと露天商の売る宝石に向けている。

可愛いなあ。

「ふーん、俺はこの翡翠なんていいと思うけどなあ」

露天商にこれいくら?と聞くと、宝石相応の価格を言われる。

そりゃそうだよね。

ちらりと姜麗を見る。

俺の持っている翡翠を見てきらきらと目を輝かせていて、とても可愛い。

これで素直でも可愛いんだけど、俺が気づくとすぐにそっぽ向いて顔を赤くするのもまたいいんだよね。

「これ、欲しいの?」

『そ、そんな高価な…じゃなくて、そんな宝石いらないわよ!』

姜麗は武家の娘。

こんな高価なものを買ったことがないのだろう。

俺は困ったように笑う。
つい本音が出ちゃうのがまた可愛いんだ。

「わかったわかった。じゃあこれは物好きな俺からの贈り物ってことで」

露天商に代金を払うと、姜麗に翡翠を手渡す。

「はいこれ」

『なっ、う、嬉しくなんかないわよ!』

「うん、そうだね。でも俺が好きであげたんだからとっときなよ」

そしてにこりと姜麗に笑いかける。

姜麗は顔を赤くするとまた俯く。

からかってるつもりはないんだけど、姜麗がこんな風になっちゃうのはやっぱり可愛い。

ついついいじめちゃうな。

俯いて顔を赤くする姜麗に気を良くした俺は、さあ帰ろうよと呼びかける。

すると、俺の手に温かな感触。

「え」

手を見ると姜麗が俺の手をぎゅうっと握りしめていた。

『あの、蒙恬……ありがとうっ』

小柄な姜麗が上目遣いでこちらを見ている。

恥ずかしいのか少し涙目で。

そして顔を真っ赤にしている。

いつもは自分から手など握ろうとしないのに。

これは、なんというか。

「姜麗、可愛い」

俺は姜麗の手をひいて自分の腕の中に閉じ込めた。

『なっ、なにするの!』

「さっきのは反則でしょ、姜麗」

先ほどの表情は俺の心臓に悪い。

まるで誘っているようだ。

「姜麗が可愛い顔するからいけないんだよ」

『なっ』

俺の腕の中でまたも顔を赤らめる姜麗。

「俺に抱きしめられるのは嫌?」

俺はまた意地悪な質問をする。

姜麗が嫌というわけがないと知っていながら。

『嫌なわけ、ない』

ほら、思った通りだ。

俺は可愛いこの許嫁をさらにきつく抱きしめた。



『あのあと皆に見られてとっても恥ずかしかったんだからね!蒙恬!!』

「でもあの時の姜麗、本当に可愛かったよ」

『う、うるさい!!!』





謝謝 美鈴様



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