■ 待たせた

私は鳳明によって、牢屋から解放された。

すぐに会いに行った人物がいる。

それは私が愛した人。

しかし家はもぬけの殻。

それどころかクモの巣が張っていて、長年人が住んでいたとは思えなかった。

何故だ。

何故。

周りの家の人々に聞いたところ、愛した人姜麗は流行り病で亡くなったらしい。

私は絶望した。

しかし鳳明に呼び出された戦には出なければならない。

心に黒い靄を抱えたまま、私は出陣した。


『霊凰様、絶対に戻ってきてくださいますね』

「ああ、だから待っていてくれ」

『ええ、お待ちしますわ。いつまでも……十年でも二十年でも三十年でも』

「三十年か、私はじじいだな」

『あら、霊凰様はいつまでも若々しいままでしょう?』



姜麗の記憶が脳裏に蘇る。

鳳明の陣が落ちた。

私はそれを見るとすぐにその方向へと馬を走らせた。

「鳳明!何があった!」

その瞬間だった。

「っらあああ!!!」

「鳳明様!お逃げください!!」

敵国、秦の武将による奇襲。

友軍、鳳明による機転。

「きさっ……!」

死ぬ瞬間、姜麗の顔が見えた。



『お待ちしておりましたわ、霊凰様』

「ああ、姜麗。やっと会えたな。長い間、待たせてすまなかった」

『私こそ』

「これからはずっと…………」



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