■ 出会い

姜麗との出会いは秦の国王が王弟の反乱を抑えた内乱でだった。

身の程知らずで我らに突っ込んでくる餓鬼、信。


その姉が姜麗だった。

もちろん剣の腕は信や我ら山の民、そして王には敵わない。

しかし、そこいらの兵よりはよっぽど剣が使えるというのが姜麗であった。


咸陽王宮内で戦っている時、俺は姜麗の近くで戦っていた。

俺の後ろから襲いかかってくる敵を倒してゆく姜麗。

女にしては素晴らしい腕だ。

しかし、姜麗が急に声を上げる。

複数を相手にしていた姜麗の剣が敵によって弾かれたのである。

『あっ……!』

姜麗はどさりと崩れ落ちる。

俺は咄嗟に姜麗の前に立ち、敵を殺した。

腰が抜けて立てない姜麗を横抱きにし、俺は走った。

そして王弟の待つ部屋へ向かったのだ。

『あの、バジオウ……さん!下ろして!足手纏いになるから!』

俺の腕の中で叫ぶ姜麗。

俺もどうして守ったのかは分からない。

「黙レ」

声を発すると、姜麗は少し怯えて黙り込んだ。

しかし姜麗は耳で弟の声を探していたようだ。

『あの部屋から信の声がする!』

姜麗の指さす方へいくと、王弟がいた。

そして俺達はその反乱を鎮めたのだった。


その夜、俺のところに姜麗が尋ねてきた。

『あの、バジオウさん!今日は助けてくれて本当にありがとう』

そして俺にお辞儀をする。

「アア」

俺は素っ気なく答えた。

『あの、えっと……これからもよろしく!』

急に発せられる大きな声に俺は驚いた。

「……ア、アア。ヨロシ『信、あの子突っ走る癖があるから、これからあの子と戦うことがあったら、見守ってあげて欲しいな!信をよろしく!』

そっちか。

俺は心の中で突っ込んだ。

「オ前ハイイノカ」

『え?私……私はこれから村に帰るよ。誰かに嫁ぐから、もう戦場に出ることは無いだろうし、バジオウさんとはこれが最後だと思うよ』

そう言って悲しそうに笑う姜麗。

少し心が痛くなった。

何故だ。

「戦ワナイノカ」

『……うん』

「戦イタクナイノカ」

『……信の迷惑になっちゃうから』

俺は軽くため息をついた。

「ナラバ、村ヲ出レバイイ」

『出ても行くところがないんだ。私は村の領主に住み込みで働いてたから』

「…一緒ニ山に来ルカ」

俺の口からはその言葉が自然と出てきた。

言った後にはっとする。

俺は何を言っているんだ。

『えっ、バジオウ……さんと?』

「俺ダケジャナイ。他ニモ仲間ハイルガ」

姜麗の顔が綻ぶ。

それだけで何故かとても嬉しくなった。

『嬉しい!……でも私が、いいの?』

「俺ガイイト言ッテイル。他ノ者ニ文句ハ言ワセナイ」

知り合ってまもない女にこのようなことを言ってしまうとは。

自分でも驚きだ。

俺は相当この女のことが気に入っているらしい。

『ありがとう!バジオウさん!』

「バジオウ、デ良イ」

『うん、バジオウ!ありがとう!』

姜麗も姜麗だ。

知り合って数日の俺にこの様な屈託のない笑顔を見せるとは。


そうして姜麗は俺達と共に山で暮らすことになったのだ。

その後すぐに姜麗のことが好きだと気づいたのだった。



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