■ 喧嘩するほど

「貴様、なめているのか」

『なめてなんていません!』

私が目を覚ますと広い高原のど真ん中にいた。

そこで倒れていた私を拾ったのが私と怒鳴り散らしている男、王賁。

「異世界から来たなどと嘘をつくな!」

『嘘じゃない!事実私の服はあなた達のものと違う!』

私の服はいわゆるパジャマ。

甲冑を着込んでいる王賁とは全く違うものだ。

それを言うと王賁は言葉に詰まる。

「だ、だが有り得ぬ!」

『あなた頭固いんじゃない!?いい加減認めてよ!』

私達の怒鳴り声に気づいた一人の男が近づいてくる。

「どうしたの、二人共」

彼は蒙恬という。

王賁の親友らしい。
(本人は違うと言っていた)

『蒙恬、こいつ頭でっかちなの!なんとか説得してよ!』

「頭でっかち……!?貴様俺を愚弄するか!」

「まあまあ二人共!王賁、姜麗のことは信じられないかもしれないけど、これが現実なんだから」

これが現実。

そうだ、これが現実なんだ。

現代に帰れない。
どうしよう。

私の目からは涙がこぼれ落ちる。

それを見て急におろおろとする王賁。

「あー王賁泣かせた」

「なっ、ど、どうすればよいのだ」

「姜麗はここにいるんだから、受け入れてやりなよ」

蒙恬は軽く笑う。

王賁は深くため息をついた。


「姜麗、すまなかった。お前の身、この王賁が預かり受ける」

ぎこちなくこちらに伸ばされた手が私の頭をくしゃりと撫でる。

その感覚に驚きながらも、私はこの世界で頑張って生きてみようと思ったのだった。



back
(表紙へ戻ります)

※章内ページ一覧へは
ブラウザバックでお戻りください
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -