■ どっちも選べないよ

『楊端和様!』

美しく気高い楊端和様に飛びつく。

楊端和様はイスに座ったまま私を受け止めた。

『お久しぶりです!』

「ああ、立派になったな姜麗」

私は幼い頃楊端和様に死にかけているところを拾われた。

それからほどなくして平地におりたが、馬に乗れるほど一人前になった私は一人で山まで来たのだった。

山民族の言葉はまだ覚えていない。

『楊端和様こそ相変わらずお美しいですね』

さらに綺麗になってます、と付け加えると微笑まれる。

後ろから人の気配がし、さっと振り向くと懐かしい姿が見えた。

『バジオウ!』

「姜麗、久シブリダナ」

私は先ほどの楊端和様と同じくバジオウに飛びつく。

バジオウは身を固くして慌てている。

私は疑問に思いながらも身体を離した。

『バジオウ、すごい筋肉だね!あのときよりもっと強くなってるんでしょう?』

「ア、アア。ズット戦イニ身ヲ置イテイルカラナ」

そう言ってヒュンと剣を振る。

刀身がキラリと光る。

『私も楊端和様に仕えたいなあ。平地はつまらないよ』

「姜麗が望むのならいてもいいのだぞ」

楊端和様はふふ、と笑いながら呼びかける。

「バジオウも姜麗のことを気に入っておるしな」

そしてわざとらしくバジオウに笑いかける。

バジオウは少し慌てている。

『バジオウ、ほんと!?』

やったー!と飛びつく私を再度受け止めるバジオウ。

「オ前ハ誰ニデモ飛ビツクノカ」

私はうーん、と考える。

『バジオウと楊端和様だけかもしれないなー。私バジオウ大好きだもん!』

そう言ってさらに頬を身体にすり寄せる。

「姜麗、分カッタカラ……!」

「好かれておるではないか、良かったなバジオウ」

『あ、でも楊端和様ももーっと大好きですから!』

そう言って楊端和様に笑いかける。

バジオウはまた固まった。

「すまんな、頑張るんだぞバジオウ」

「……」


私はその後山民族の一員として共に戦うようになるのだが、またそれは別の話である。



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