■ 大好きです!

『輪虎様お願いします』

「分かった」

私は輪虎様に仕える一人の女剣士。

ある日、私は双剣術を学ぶために輪虎様の屋敷にお邪魔することとなった。

そして私たちは剣の稽古をする。

汗がほとばしる。

しかし輪虎様は汗の一つもかいていない。

こんなに力の差があるのだろうかと少し悲しくなってしまう。

「ほらほら、剣が鈍くなってきてるんじゃない?」

カンカンと木剣が私の両手の剣に振り下ろされる。

輪虎様が右の剣で放った一撃が、私の左手の剣を跳ね飛ばす。

『あっ……!』

「勝負ありだね」

『参りました……っ』

私は右手の剣を下ろし、深々と一礼した。

もちろん勝てるとは微塵も思っていなかった。

しかしこの力の差はあまりにも大きすぎるだろう。

息の乱れていない輪虎様を見てそう思った。

『輪虎様、お手合わせありがとうございます』

「僕も楽しかったよ」

そう言って笑う輪虎様。

私は気づかれないようにため息をついた。

少しは強くなれているのだろうか。

輪虎様のお役に立てる日は来るのだろうか。

「姜麗、ため息をついたら幸せが逃げちゃうらしいよ」

そう言って私の頭に手を乗せる輪虎様。

私は飛び退いた。

『なな、輪虎様!?』

「あ、ごめん嫌だった?」

いいです!むしろありがとうございます!

とは言えず、私は口をもごもごとさせる。

尊敬敬愛する輪虎様に頭を撫でて貰えるなんて!

『恥ずかしさでどうにかなりそう…』

「僕に撫でられて恥ずかしいの?」

『えっ』

もしかして声に出してた!?

『何でもないです!輪虎様聞かなかったことに!』

「それは無理かな」

そう言ってなお、よしよしと頭を撫でてくる輪虎様。

「君は僕の部下だけど、僕は君のこと結構気に入ってるんだ。だから剣も見てあげてるんだよ」

そういう輪虎様に見惚れる。

『り、輪虎様……!私も輪虎様のこと大好きです!』

「はは、大好きってまた直球だね。僕もそんな君のことが好きだよ」


次の日、普段と輪虎様の様子が違うことを大将軍廉頗様に見つかってしまったと本人から聞いたのは、また別の話。



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