■ 質問攻め

『どうしたの』

「あーどうもしねーよ」

『どうちたんでちゅかー』

「てめ、ふざけてんのか」

こんな言い合いをするのは私と信。

私たちは同じ村で育った。

信は今千人将になってしまって、昔の面影なんて残っていない。

常に戦場に身を置く立派な軍人になった。

私は幼い頃から剣の指南を父親から受け、飛信隊の伍長になった。

伍長と千人将という立場の違いこそあれ、私たちの仲は良かった。

「……政に子供が生まれたってよ」

『政って、大王様か』

「おう」

以前から信が秦の大王、エイ政と仲がいいことは聞いていたので別に驚きもしなかった。

「子供って、どんなんだろうなー」

『そうだねぇ、いたらほっとけない、守ってあげたい、そんな存在なんじゃないの?』

私にも子供はいないが、ふとそんなことを考えた。

感覚は多分それであっているはずだ。

「でもそれってよ、好きな女にも当てはまるだろ?もっと子供に対してしか持てない感情ってねーのかな」

『信、どうしたの』

そういうことに不得手なはずの信の口から好きな女の話が出るとは思わなかった。

「お、俺がそんな話したら変だっていうのかよ」

『変』

「お前な……!」

信はため息をつく。

「俺だって気になるやつくらいいるんだよ」

『え、そうなの!?誰誰?』

私は身を乗り出す。

幼い頃からの仲だ。

信の将来の嫁の話に食いつかないわけがない。

「そいつスゲェ鈍感だからよ、気づかねーんだよな」

『信なら大丈夫だって。持ち前のバカさ……じゃなくて強気でガンガンいっちゃいなよ!』

信にしては弱気な発言に驚きながらも私は助言をした。

「そうか……?蒙恬は駆け引きも大事だとか言ってたんだけどな」

『楽華隊の蒙恬千人将!かっこいいよね』

「え、何おまえあんなやつが好きなのかよ」

『好きというか、かっこいいってだけだけど』

信はがーーっと頭をかきむしる。

「女のいうかっこいいと好きってどう違うんだ!?わけ分っかんねぇ!」

『なんて言うのかな、信だって六大将軍はかっこいいと思うでしょ?でも恋愛対象ではない』

「当たり前だろ、男だぞ」

『じゃあ楊端和だよ。すごいと思うけど、好きではないでしょ?それと同じ』

信は高速で頷く。

理解してくれたようだ。

「じゃあお前は蒙恬を好きではないんだな!」

『最初からそう言って…』

「良かったあー!」

何故か握りこぶしを掲げる信。

それは将軍首を取った時にとっときなよ…。

「他にはかっこいいやつとかいねーの?」

『王賁千人将はかっこいいと思うよ、好きではないけど』

っよし!!と意気込む信。

ねえどうしたの一体。

私が信の恋愛話を聞き出そうとしていたのに、いつから立場が逆転したのだろう。

私はしばらく質問攻めにあったのだった。



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