1.ああ、ボクは構わないよ
今日はクラスで役職ぎめの日。
一番面倒な学級委員長に何故か任命されてしまったのだ。
「ほんっとうに有り得ない!」
キー!と擬音語が出そうな程に怒る私を友達が頑張ってなだめる。
確かにこの日遅刻してきた私が悪いよ!?
だからといってなんでわざわざ学級委員長なんかにしちゃうかな!
「仕方ないわよ、私もあなたが一番クラスをまとめるのが上手だと思うし」
親友の煽てと慰めに嬉しいのか悲しいのか複雑な気分になる。
「それに相手があなたの好きなキッド君じゃない」
「だから問題なのよ!」
周りにキッドがいないかを確認して小声で話す私たち。
後ろから本人が歩いてきているのは気づかなかった。
「なんで?お近付きになれるわよ」
「嫌がられるかもしれないじゃない!」
私が泣きそうな表情で訴えると、ふわりと頭に何かが被せられる。
ほんわかとした牧草のような香り。
これは……
「だって、キッド君?あなたはこの子と一緒は嫌?」
その帽子をかぶせてきた人物の笑う表情に見とれる。
(ああ、ボクは構わないよ)
むしろ、嬉しいよと微笑むその顔を最後まで直視なんてできなかった。
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