4.あきらめてくれる?
 

鷹くんは天才肌だからか、普通の人と感性が違う。

それに気づくのは付き合い始めてからそう遅くはなかった。

手作りクッキーを作って渡したとしても、普通に受け取るだけ。

私も決して料理が下手な訳じゃないんだけど…。

これほどまでに無頓着だと、なんだかちょっと寂しいというか。


もちろんそんな鷹くんを好きになったのは私だから、そんなことで嫌いにはならないけど。


「どうしたんだ」

横を歩く鷹くんが話しかけてくる。

今日も私のカバンの中には手作りのチョコが入っている。

もちろん渡すつもりだったんだけど、もしかして迷惑なのかな。


私はしばらく悩んだ結果、渡すことにした。


鷹くんに迷惑だとしても、鷹くんのために作ってきたのは確かだし、こういうのは気持ちが大事なんだよ!

と自分に言い聞かせ。


『あ、あの鷹くん。これ作ってきたんだ!』

手渡す袋。
オレンジの袋でラッピングされ、薄い水色のリボンが巻いてある。

受け取る鷹くん。

私はおずおずと鷹くんの表情を見た。

しかしいつもどおりの無表情。

少し残念な気持ちになりながら鷹くんに笑いかけると鷹くんに気づかれてしまった。

「表情が暗い…なにか、あったのか」

私は少し目線を下に落とす。

『いつも、こういう食べ物渡すの、迷惑になってないかな…って』

私が言い終わると、急に立ち止まる鷹くん。

私は驚いて振り返る。


「ごめん。感情を表現するのは、苦手なんだ」


鷹くんが呟く。


「僕にそういうことを求めるのは……」


(あきらめてくれる?)


私は唇を噛み締めた。


「でも…感謝してるんだ。本当に」

鷹くんは照れくさそうに頬をかく。


「とても、美味しい」


ストレートに発せられた言葉。

私は顔に熱が帯びてゆくのが分かる。


鷹くんも恥ずかしいのか私の手を取り、駆け足になる。


鷹くんの顔が少し笑っているのを見て、私も自然と笑っていた。



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