3.それどころじゃないから
 

鷹くんはいつも本を読んでいる。

その凄まじさは練習中にも読むほど。

私の予想だと風呂の中でも読んでるんじゃないのかな。


いったい今までに何冊の本を読んだのだろうか。


私は気になって、下校中に鷹くんに尋ねてみた。



『ねえ鷹くん、今までに何冊本を読んだの?』


鷹くんは読んでいた本から目を上げて、私を不思議そうに見つめる。

そしてしばらく考え込んだ。

「そうだね…一日に一冊換算で考えれば、かなり読んでいることになるだろうね」

確か、小学校に入ってから読み始めたんだったと続ける鷹くん。


つまり小学校の六年間に加えて中学校の三年間。
それに365日をかけるってことだから…うわあ。

よく読む本が枯渇しないなあと逆に感心してしまう。


「いや、でもここ最近はあまり読めていないな。このライ麦畑でつかまえてなんてここ一週間は読み続けてる」

私は驚いた。
一日一冊読んでいた本の虫が…ここ一週間同じ本を読んでいる!?

「今失礼なことを考えただろう」

『ほほほ本の虫とか言ってないよ!?』

鷹くんは黙り込む。

私は顔を背けた。


『えっと…どうして最近読めてないの??』


鷹くんは目を見開いた。


まるで、当たり前だろうとでも言うように。





「君に夢中で」





(それどころじゃないから)


足が止まる私に微笑みかける鷹くん。

その顔を直視するなんて出来るわけがなかった。



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