(清十郎視点)
清香が寄りかかることでベッドが軋む。
ふと清香を見ると、眠たいのか頭が上下に動いている。
俺は持っていたダンベルを静かに下ろし、ベッドから下りた。
「眠いのか」
そう尋ねても帰ってくる言葉はない。
疲れているのだろうから、仕方あるまい。
俺も眠りたかった。
しかし先日、清香にベッドを譲らなかったことを後悔していた俺は、船をこぐ清香をそのまま床に寝させることは出来なかった。
「どうすべきか」
俺は悩んだ。
急に清香が横にぐらりと倒れかかる。
俺は咄嗟に身を寄せて清香が倒れることを防いだ。
しかしそれが裏目に出たのか、清香が俺の肩に頭を乗せたせいで身動きがとれなくなった。
ふと清香の腕をみると黒く筋のようなものがある。
俺は目を凝らす。
清香が寄りかかっているせいでよく見えないが、これは…指の跡?
そのとき俺の頭に金剛阿含の顔が浮かんだ。
そうだ。
昼間俺が金剛阿含の話をした際、清香の反応がおかしかったではないか。
目をそらす清香になんの疑問も抱かなかった昼間の俺を恥じた。
高見さんのジャージを羽織っていたのも、俺にこの痣を見せないようにするためだったのだろうか。
俺は悔しさや怒りの混じった変な感情がふつふつと沸き上がってきたのに気づいた。
清香を一人で別の学校へは行かせられない。
たとえ王城の試合に関わることだとしても。
俺はこれ以上清香に傷ついて欲しくなかった。
そんなことを考えているうちに俺は自然と眠りについていた。
fin
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