21st down
清香は部室のパソコンに向かって一心不乱に文字を打ち込んでいた。

『駄目だ…あんまり西部の情報手に入らないなー』

後ろからのぞき込む高見。

「熱心だな、情報収集か?」

『うん、伊知郎の知ってる情報は頭に入れたんだけど、選手の細かいことが分からなくて』

「選手の癖を知りたいのか」

清香は正解!というように頷いた。

『癖って抜けないからね。まあわざと逆手に取ってくる人もいるけど』

清香は蛭魔を思い出し苦笑いをした。

「それならば、蛭魔に聞けばいいんじゃないか」

『伊知郎ってなんでそんなに勘が鋭いかなあ…』

そういいながら携帯を取り出す清香。

蛭魔の番号を見つけて電話をかける。


「なんだ」

コール音の後に聞こえる蛭魔の声。

清香は肩と頬で携帯をはさみながら、手と目はパソコンに集中する。

『妖一にお願いがありまして』

「気色悪りーな、で?何だ」

暴言を吐きつつも話を聞いてくれるのが妖一らしいなと思いながら清香は続けた。

『西部の選手について教えてくれない?』

「んなもんテメーの目で見ろよ」

『いや、色々ありまして…』


清十郎とか清十郎とか清十郎とか…と心の中で文句を言いながら清香は口を濁した。

「おーおー弟クンの目が厳しいですなー」

携帯ごしに不吉な笑みを浮かべる蛭魔の姿が見えた気がして思わず身震いする。

『な、なんで…』

「やっぱり進のせいか」

騙された、と落ち込む清香。

「まあ西部は強い。今の泥門なら100%負けるな」

『王城は』

「んなモン自分で分析しやがれ。まあ一つ教えてやるよ」

清香は急に真面目になった蛭魔の声に身構える。

「キッドには気を付けろよ」

『キッドくん…二年の早撃ちQBだよね』

「早撃ちの名前は伊達じゃねえ」


清香は頭に思い描く。


伊知郎の投げるスピードはお世辞にも早いとはいえない。

それはやはり攻撃に穴がある王城の弱点でもある。

春人がいてくれれば戦術にも幅が出るのに。


『つまり、この試合は』

「王城の防御vs西部の攻撃ってことだ」


清香はパソコンを閉じる。

『ありがとう妖一、なんだか視界が開けたって感じ』

「まあ、見返りを期待せずに待つとするか、ケケケ」

み、見返り!?

そう叫ぶ前に電話は切れた。


清香はため息をついたが、得たものは大きかった。

『キッド…か』



__to be continued


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