シャワールームから出てくる清十郎をドアの前で待っていた清香。
「もう帰るか」
『うん』
清香はずっと考えていたことを切り出した。
『今日アイシールドに会ったでしょ?』
清十郎は髪の毛をタオルでゴシゴシと拭きながらその話を聞いている。
『実は私、先週から知ってたんだよね』
「すでに会っていたことはなんとなく察しがついていた」
清十郎は続けた。
今日河川敷でアイシールド21を見たとき、いつもの清香ならすぐに気づいてアイシールド21に話しかけていたはず。
しかし、清十郎がアイシールド21とすれ違った後も清香はそのことを言及しなかった。
つまり言及する必要がなかったということだ。
したがって清香はアイシールド21の正体を知っていて、故意に清十郎に言っていなかったということになる。
清十郎が言ったことを要約するとそういうことだった。
清香は目をそらす。
『あー…気づいてたんだね』
「俺が人を体格で見分けるように、清香も人を体格で見分けているだろう」
『いやそれは違うけどね!?』
清香は反論した。
清香は外見を見た上で、体格をも見比べている。
体格で全てを見分ける清十郎は異常なのだ。
「来週の試合はおそらく勝つだろう」
『うん、練習試合でも勝ってるしね。問題は…』
”西部”
二人は声をそろえた。
『西部のデータは持ってるんだけど、実際の試合は見たことがないんだよね』
「高見さんに聞くといい。練習試合のデータもとってあるだろう」
荷物をまとめ始める清十郎。
『そうだね。でも何となくだけど、西部は本当に強くなってる、そんな気がする』
「勘か」
『勘よ』
清十郎は荷物を持ち上げると、ふっと笑った。
笑うといっても、清香に分かる程度でだが。
『偵察に行こうかな』
「いや、偵察には他の非レギュラーの選手が向かうだろう。清香はスタメンの調整をしてくれ」
清香はすでにまとめてあった荷物を背負う。
『そうはいうけどね、実際に目で見た方が分かることが多いって清十郎も知ってるでしょ』
「うむ」
それ以上何も答えない清十郎。
意地でも私を偵察に行かせる気がないのか、と清香はため息をついた。
まあ偵察メンバーがちゃんとビデオ撮ってきてくれればいいか…と妥協案を思いつきながら、清十郎と肩を並べて歩き始める清香。
『(そうだ。妖一にメールしとこうかな)』
他の選手たちに挨拶をしながら、清香はふと考えたのだった。
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