王城につくまで二人はずっと黙っていた。
学校につき、清十郎は簡易シャワーを浴びに行った。
清香は練習から上がった選手たちの中から猫山を見つけ出す。
『猫山くん、自転車ありがとうね』
「いえ、サドルは大丈夫でしたか?」
清香はニコリと笑って答えた。
『ちょうど良かったよ?今度からも時々借りちゃうかもしれないけど、そのときは宜しくね』
「は、はいっ!」
猫山は清香を見て少し顔を赤らめる。
『今日はもう上がりだよね?お疲れ様』
そういい、シャワールームへと向かう清香。
残された猫山はその後ろ姿をじっと眺めていた。
「猫山、少しいいか?」
急に声をかけられた猫山は肩をびくりと震わせ、後ろを向く。
「な、なんですか高見さんっ」
声をかけた高見は猫山の反応に驚く。
「どうしたんだ?」
「い、いえ…」
高見は猫山の手に握られている自転車の鍵を見た。
ふと顔をあげると、シャワールームへと向かっている清香が目に入った。
「清香が気になるのか?」
高見は微笑んだ。
清香に対する後輩の反応が新鮮に感じた。
「そんなことないですっ!」
慌てて否定する猫山。
「ふっ…まあいいよ。ところでお前のRBとしてのポジションなんだが、進が攻撃に加わる際に少し場所を変えたいんだ」
「進さん…攻撃に加わるんですか?」
猫山は驚いて高見を見た。
「ああ。清香が提案してきたんだ」
「清香先輩が…?」
高見は眼鏡をクイと上げて笑った。
「本当に清香は色々…進のためにやっているよ」
高見は進という単語を言う直前に少し間を空ける。
猫山はそんな高見を見て首を傾げるのだった。
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