『伊知郎、春人のことなんだけど』
「桜庭の容態か?」
『いや、お見舞いの件だよ』
高見はああ、と納得したように声を漏らした。
「再来週にある決勝戦に優勝してから、行こうと思っているよ」
清香は笑った。
『優勝するの前提なんだ』
当たり前だろう?と眼鏡を押し上げる高見。
『油断は禁物。最後まで気を抜いたら駄目だよ』
「もちろん分かっているさ」
高見と清香は顔を見合わせると、同時に笑う。
しかし、事故に遭う寸前の桜庭の様子を思い出す清香。
真顔になる。
『ちょっと心配だよね…』
高見はなんのことか分からなかったようで、首を傾げた。
アメリカで勉強してきたメンタルケアがここで役に立てばいいんたけどな…。
清香は高見に気づかれないくらい小さな声で呟くのだった。
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