3rd down
両者とも黙り込んでいる。

清香は恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいだった。

「おい聞いてるのか」

『は、はいい!?』

話しかけられていたことにも気づかなかった清香はさらに顔を赤くした。

「名前はなんていうんだ」

『キヨカ…です』

キヨカね、と確認するその人物。


グラウンド横の観客席につき、見やすい場所におろして貰う清香。

ぺこりとお辞儀をした。

「それは日本流の挨拶だな」

『は、はい』


その人物は清香の横に腰を下ろした。

練習はいいのかと問うと、もう少しだけだとぶっきらぼうに返された。


「ノートルダムには留学しに来たのか」

『はい』

「そうか、惜しかったな」

清香は首を傾げる。

「俺と同じスクールだったらもっと早く知り合えただろうな」

『え!?ノートルダムの方じゃないんですか?』

清香はびっくりして尋ねる。

「当たり前…ってそうか。お前試合見るの初めてなんだったな」

普通はユニフォーム見て気づくんだけどな、と付け加える。


グラウンドから声が聞こえる。

「おーい、クリフォード!!練習始まるぞ」

練習とパフォーマンスが始まるようだ。


『あ、もう始まりますね。えっと、クリフォード…さん?』

「クリフォードでいい。ところでお前、俺には丁寧な英語使わなくてもいいんだぜ」

『そ、そう?』

「アメリカは年齢なんて気にしないからな」


そういって観客席から立ち上がるクリフォード。

再度腰を屈めたかと思ったら、いきなり清香の頬に口づけをした。


『ひっ!?』

顔を真っ赤にしてその頬を押さえる清香。

クリフォードは不適にほほえんだ。

「アメリカ流の挨拶だ。お互いの文化は共有しねーとな、キヨカ?」

そういってグラウンドへと去ってゆくその人物。

チームメイトと合流するクリフォードの姿を遠くから眺めながら、清香は硬直したまま動けなかった。



20130706


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