11th down
バスに乗る前に、明日以降の予定が高見から告げられた。

「皆お疲れ様。明日は朝練なしだ、しっかりと、身体を休ませてくれ」

選手達がバスへと乗り込み始める。

清香はバイクで来ていたので、バイク置き場へ向かおうとする。

それをとめる清十郎。

「少し、話がある」

『う、うん!どうしたの?』

「一緒に帰る」

清香は庄司と目配せする。
監督も驚いているようだ。
それは高見や他のメンバーも同じだった。



清香はバイクを押しながら清十郎のとなりを歩く。

「このままではいけない」

清十郎がおもむろに口を開いた。

『アイシールドのこと?』

清十郎は無言で頷いた。

「俺は両面に出る」

清香は驚いた。

『つまり清十郎も攻撃に加わるの?』

「ああ。そのためにはスタミナをつけねば」

メンタル面やフィジカル面、技術面でも清十郎だけでなく、王城は泥門を上回っている。

確かに全員が両面として出場する泥門と片面しか出ない王城の個々のスタミナを比べれば、圧倒的に泥門が有利。

『両面で出るっていっても、監督たちには言ったの?』

清十郎は首を横に振る。

先に私の意見を聞きたかったんだ。
そう考えると清香の顔は自然とほころぶ。

「お前は反対か」

清香は黙り込んだ。

王城の基本方針は防御。
清十郎はその要だ。
その清十郎が両面にでるとなると…

『これは本格的にスタミナ作りしないとね』

清香のその言葉を肯定ととったのか、清十郎はぼそりと呟いた。

「ありがとう」

何言ってんの!と清十郎の背中をドンと叩く清香。
ぐらつくことなく立っている清十郎。

「清香にはこれから山ほどしてもらいたいことがある」

『え』


清香は清十郎の言葉に硬直した。


「俺が両面に出ることによって考えられるメリットとデメリットがそれぞれ存在する」

『う、うん。一つは攻撃力の上昇』

「ああ、もう一つは防御力の低下」


あくまで考えられるってだけだけど、と清香は付け加えた。

「お前にはそれらのメリットとデメリットによる試合の進行具合についてのシュミレートをしてもらいたい」

『は!?私そんな大層なことできないんだけど!』

「いや、そんな大変なことではないと思うが。それを改善するために俺がどうするべきかについての意見を求めたいんだ」


そういうこと…と清香は安堵する。

これだから気真面目な弟を持つと大変なんだ。


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