10th down

荷物をバスの前に運んでいる清十郎が清香を見て尋ねる。

「そのジャージは誰のものだ?」

清香は自分が着ているジャージを眺める。


そうだ、忘れていた。
伊知郎に借りてたんだっけ。
それもこれも阿含が悪いんだ!


『これね!ちょっと肌寒いから伊知郎に借りてたんだけど』

「以前着ていたものは」

『ファンから隠すために春人に被せちゃって』

「なるほどな」


納得してくれたらしく、荷物を荷出係の運転手に手渡す清十郎。


うまくごまかせたのだろうか。


清香は不安になる。

そっとその場を離れ、少し遠くにいた高見の元へと走った。

『伊知郎、このジャージ明日洗って返すね!』

「洗うって…羽織っているだけじゃないか。別に気にしなくてもいいのに」

『いや、私が気にするから』

高見は先ほど痣が見えた方の腕をジャージ越しに見つめる。

「金剛阿含かい?」

『!!』

高見は王城で、清香が神龍寺にいたと知っている数少ない人物の一人だ。

しかしまさか当てられるとは、と清香は苦笑する。

「その反応は、やっぱりね」

『伊知郎に隠し事は出来ないね』

高見は眼鏡をクイと上げる。

「無茶しないでくれよ。今や君は王城の一員なんだから」

『大丈夫、心配してくれてありがとう伊知郎』



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(10/22)

bkm



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