飛行機の音が清香の耳に響いた。
12歳の清香はノートルダム大附属中学に留学することになった。
自分の日本での評価が嫌で嫌でたまらなかった為だ。
『逃げても何にもならないのにな…』
清香は顔を伏せて呟いた。
ノートルダム大附属に来て、寮に入る。
二人部屋で、一つ年上のアメリカ人の生徒と同室になった。
「ハイ!あなたアジアンよね?私はSarah Adamsよ」
明るいアメリカ人だ。
欧米人は皆日本人より陽気なのだが。
事前に英語を日常生活に困らない程度に勉強していた清香は自己紹介をする。
『日本から来たんだよ!はじめましてサラ。私は清香っていうの。よろしくね』
急にバグされ、言葉を失う。
「あ、日本人ってボディタッチダメなのかしら」
『あ、あまりしないかな』
「ごめんねキヨカ。ノートルダム大へようこそ!お詫びというか、私が校舎を案内してあげるわ」
サラは清香の手をとり、寮から飛び出す。
よろけながらサラについて行く清香。
「来たばかりで何も分からないわよね?クラブチームを紹介してあげるわ」
ここは名門だからスポーツも凄いのよ、と微笑むサラ。
「まず、ベースボールでしょ?」
広すぎるグラウンドとジムを周りながら様々なクラブを説明してくれるサラ。
ボクシング、テニス…
どれも日本でメジャーなものだ。
清香は尋ねた。
『サラはクラブに入ってるの?』
「そう!それを今から言おうと思っていたのよ」
サラは学校内で一番広いグラウンドに清香を連れて行く。
『芝に文字が書いてあるね、何のスポーツ?』
「フットボールよ!」
清香は首を傾げた。
『え?サッカーのこと?』
サラは唖然とする。
「アメリカンフットボールに決まってるでしょ!いい?私の前だからいいけど、他の人にそういうこと言っちゃダメよ?」
どうやらアメリカ人にとってフットボールというのは、アメリカンフットボール以外のなにものでもないらしい。
『わかった…ごめん』
「いいのよ。日本では有名じゃないんでしょ?」
清香は頷く。
『日本ではラグビーの方が一般的かも』
サラは肩をすくめる。
「うーん、そうかもね」
『サラはアメフトをしているの?』
「そんなはずないでしょ?私のこのスマートなボディのどこに筋肉がついているというの?」
そういってTシャツを捲り、ウエストを出すサラ。
確かにとても細い。
『え、じゃあ…』
「私はね、フットボールチーム専属のチアガールに入ってるのよ」
清香はグラウンドを見渡した。
確かにずっと遠くでヘソ出しの服を着た生徒達がいる。
チーム専属チアがいるくらいだから、アメリカでは相当メジャーなスポーツなのだろう。
『なるほどね!』
「あなた、背高いんだからチアに入る?」
清香はえ!?と叫ぶ。
『私が…チア!?』
清香は、ヘソ出しの衣装を着て踊る自分を想像する。
『…ないな』
「そうかしら?ま、そう簡単にいくなんて思わなかったから、私は気長に待つわ!今週の日曜日、練習試合で私も応援するから、あなたも見学に来たら?」
アメリカといえば週末はフットボール観戦よ!と清香の手をとりはしゃぐサラ。
清香は日本であまり見なかったスポーツに少し興味を持った。
20130630
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