19.5th down(番外編)
清香は一休のことを思い出す。

あのとき、まだ一休は入学したてだったけど、才能の片鱗は見えていた。



一年前___

「清和!一緒に風呂行こうぜ」

『あ、俺はやめとくよ。俺、マネージャーみたいなもんだしさ。そっちのが疲れてるだろ?』

清和もとい清香を誘った男子はお前付き合いわりーな!といって風呂へと向かう。

清香は男子ではない。
一緒に風呂に入ると女と言うことがバレるのは確実だった。

男子にごめんと言って、清香は自分の部屋に戻った。


三時間後…

うたた寝をしていた清香はハッと目を覚ます。

『寝過ごした!』

この時間に風呂に入る者はいない。
清香はいつもこの時間にこっそりと風呂に入っていた。

慌てて準備をし、風呂へと向かう。


男子校の風呂なので、多少むさ苦しいのは仕方のないこと。

清香は念のためタオルを全身に巻き、風呂へと入る。


『あー良い湯』

温泉ではないが、一日の疲れが落ちるようで、清香はついうとうととする。



『ん…』

顔がお湯につかる寸前に目を覚ます清香。

横を見ると…


『いいいい一休!?』

「よ、なんか気持ちよさそうに寝てたから起こしたらマズいかなって」

『こんな時間になんで入ってるんだよ!』

「それはこっちのセリフ。この時間入っちゃダメなんだろ?」

清香はタオルを確認する。
大丈夫、見えてない。

「なんだよ。お湯を独り占めしたかったから、いつも俺らと一緒に入らないわけ?」

うまい具合に勘違いをしてくれている。

清香は頷く。

『そうそう!いやー俺も皆と一緒には入りたいんだけどさ!お湯を独り占めする喜びには代え難いっていうか』

「そういうことか!いやー先輩に報告しないとな」

清香はえ?と首を傾げる。

「先輩や友達がな、清和が俺らと一緒に入らない理由を予想してたんだ」

『ちなみに、どんな?』

「きっと、小さいからバカにされたくないんだ!とか、実は女なんだ!とかな」

清香は硬直する。

いや、前者の理由はいかにも男子校らしいが。

後者の理由、当たっている。

清香は必死に頭で考える。

『(一休が先輩達に報告したら、私が男ってことは確実になるでしょ?そしたら無理やり一緒に風呂に入らされるかもしれない!)』

清香は唸る。

ここは、一休だけでも話して、女の気持ちを持っているが故に気づいた玄奘とは別に、まともな仲間を作っとくのもありかもしれない。

清香は考えた。


『一休』

「ん?何」

『焦らないで、聞いてくれ』

「ああ」

『俺、女なんだ』



「は?」



一休はポカーンとする。


「ちょ、まてよ。ふざけてんの?」

『ふざけてなんかない』

一休はしばらく黙るが、急に顔を真っ赤にして、風呂から上がって出入り口へと駆ける。

「おおお俺、そんなつもりじゃないからな!!知らなかっただけっていうか!今日は偶然この時間に入ったっていうか!!」

『いや、別に気にしてないんだけど』

清香は男子校の男子の普通の反応に呆れる。

『一休って純情だね』

「お前がおかしいんだろ!!」

清香はくすりと笑う。

『俺の本当の名前は、清香。まあもちろん普段は清和で過ごす予定だけど』

他言無用ね?
と釘を差しておく。

コクコクコクと何度も頷く一休。

「あー…そりゃ身体のラインが細いわけだよなー」

何か呟く一休。
清香が問うと、なんでもない!と頬を真っ赤にして否定する。

『一休の他には、玄奘しか知らないんだ。だからよろしくね、特に阿含には絶対知られたくないから』

一休は納得する。

「阿含さん女癖悪いからな」

一休はバッと背を向ける。

「お、俺もう出るから!一応風呂の前で誰か通らないように見張っとくから!」

そういって出て行く一休。

清香は目を細めて笑った。

気づかれたのが一休で、本当に良かった。

そういうとまた清香はお湯にゆっくりとつかり始めたのだった。



___



『あー今思ったら私一休と混浴してたんだよね…』

本当に阿含じゃなくて良かった。

清香は再度そう思うのだった。


fin


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