清十郎にヘルメットを手渡す清香。
何も言わなかった。
言わなくても通じていた。
頑張って。
それに答えるように清十郎は軽く頷いた。
清十郎がヘルメットをかぶり、グラウンドへと出て行く。
そのとき、蛭魔に蹴られたアイシールド21が清十郎の前に押し出される。
清十郎は自分より小さいアイシールドを見つめる。
しかし、どちらも喋らない。
『…うわ、無言つらい』
アイシールドは道を譲り、清十郎はそのまま王城ディフェンス陣の元へ。
合流したとき、蛭魔が大声で次の作戦、ロングパスだと宣言しだした。
さすが妖一というか…と清香は苦笑する。
誰も引っかからないと思ったとき、ディフェンス陣から大田原の声が聞こえてくる。
どうやら悩んでいるようだ。
大田原が清十郎の背中をばしん!と叩いていることから、多分清十郎が何か言ったのだろうと清香は推測した。
「進が出て周りの顔つきが変わったな」
「いつものホワイトナイツに戻っただけだ。これで勝負決まりだな」
阿含は雲水の言葉に返答すると、双眼鏡を覗き込む。
そして舌打ちをした。
「どうした?」
阿含の突然の舌打ちに驚く雲水。
その双眼鏡は王城のベンチを向いていた。
「清香の奴、笑ってやがる」
「…そうか」
「そんなに進の試合を見たかったのかねえ」
雲水は何も言わなかった。
双子の弟を応援するということ。
きっと清香の気持ちは自分と同じ、そう考えた。
「…」
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