『今の春人、なんか変だった』
「背後からのプレッシャーか」
清香は起き上がった桜庭の近くを見渡す。
近くには泥門の1番、蛭魔妖一がいた。
『落としてたらインターセプト確実だったね』
もちろんパス要員は桜庭だけではない。
高見はその後、三回のショートパスを繰り返す。
「どうもおかしい…」
『うん、対策を練らないはずがないもんね。あの1番なら』
「むしろパスを誘っているように思える」
清香はアメリカ時代の記憶をたどる。
『策士は裏をかく。パスを誘うってことはパスになにか勝機を見いだしてるってことだよね』
清十郎は頷く。
残り12ヤード。
高見が投げたボールは桜庭の方向へ。
そこへ全速力で駆けてゆくアイシールド21。
「やはり…!」
『インターセプト狙い!!』
アイシールド21はボールを取りこぼす。
そのボールが落ちる瞬間にそれを予測していた泥門の策士、蛭魔がキャッチする。
『ボールは生きてる!!やばっ』
「王城はこのくらいのスピードの選手ならば止めることができる」
清十郎はこの状況を冷静にとらえる。
確かに蛭魔のスピードは凡人程度。
しかし、ブロッカーと対面する直前に逆方向にパスを出す。
『待って…そっちには』
桜庭との接触から立ち直っていたアイシールド21がそのボールを受け取る。
清十郎はベンチから身を乗り出す。
泥門側はこれを予想していたのか、次々に壁をつくり、王城のブロッカーをせき止める。
庄司の指示で49番がアイシールド21を押し出した。
『うわ…残り13ヤード』
先ほどの王城の攻撃とほぼ同じ距離。
ここまで走られていたとは。
当然次もアイシールドのランだと誰もが思っていた。
しかし、違った。
クォーターバック自身が走ったのだ。
裏をかかれた王城ディフェンス陣は5ヤード前進を許してしまう。
王城ベンチが暗い雰囲気に包まれる。
特に桜庭は落ち込んでいる。
庄司が話し出した。
「あの計算外の男の存在でこのような事態になった」
そして、神龍寺をチラとみる。
「これ以上神龍寺の面前でもたつく訳にはいかん」
清香はぞくりとした。
待ち望んでいた瞬間が来た。
「進」
「はい」
「終止符を打ってこい」
清香はバインダーを抱き締める。
「はい」
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