『泥門はほぼ全員が両面。選手層が薄いなら仕方のないことだけど。寄せ集めのチームの守備なんてたかがしれてる。なにを仕掛けてくるかな』
清十郎はしばらく黙り込む。
「ホワイトナイツの攻撃は素人にとめられる代物ではない。ありえるのは、ロングパスのインターセプト…」
ショートパスではボールの滞空時間が短すぎる。
ランならなおさらだ。
桜庭がヘルメットをかぶり、グラウンドに出ると同時に、客席から悲鳴に似た歓声が響き渡る。
『うるさいなー』
「いつものことだ」
ロングパスのインターセプト…。
一番狙われるのは桜庭だ。
清香は桜庭に向かって叫ぶ。
『相手をしっかり見て!!高さの利を生かしてね!』
桜庭の高さならそうそうのパスは通る。
なにか仕掛けられない限りは。
「ったく、いつから王城のエースは桜庭になったんだ?」
冷やかしの笑いを桜庭に浴びせる阿含。
「ジャリプロってのも大変だねえ」
「王城のランニングバックは一年らしい。確かにスポットライトを浴びるなら二年桜庭へのロングパスだが」
「しかも、泥門のやつらそのランを止めるために初っぱなからゴールラインディフェンスしいてやがる。バカじゃねーのか」
雲水がそういったときだった。
言葉通り、高見の投げたパスは桜庭へ。
しかし桜庭はボールを掴み損ね、その場に滑り込むようにしてボールを抱え込んだ。
「今のパス取ってそのまま走れたじゃねえか。俺なら殺してるね。なにがエース桜庭だか」
「確かに20ヤードは行けてたな。だが、テレビや客が勝手にエースに祭り上げて、本人が一番辛いんだ」
阿含はそう言う雲水をチラリと横目で見た。
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