プレーが再開される。
清香は息をのんだ。
清十郎はアイシールドの走りに見入る。
それほどまでにその走りは見事だった。
『凄い…』
まず一人を抜き、カットしながら立て続けに二人を抜く。
普通のランナーなら王城のラインの立ち直りに崩されるが、高速のランナーならば話は違ってくる。
泥門のラインは0.5程しか保っていないが、それで十分だった。
「走りに怯えが消えた」
『ここを抜かれたら、もうダメだね』
一人が追うが、追いつけるはずもなかった。
先制点が泥門に入る。
誰もが予想外だった。
スコアボードに6-0と刻まれるのを何も言えずに見守る王城の選手達。
清香は記憶を遡る。
鉄壁を誇るホワイトナイツからタッチダウンをとったのは、神龍寺以来なはず。
こんな逸材がいたなんて。
「監督、自分は敵を見誤りました。おそらく彼は長年に渡り走力の特殊訓練を施された人物です」
清香は頷いた。
スポーツ未経験者ではありえないカットだ。
「40ヤード走4秒6程と思われるスピードに…超人的なカット。あれでもしアメフト初心者なのだとしたら…」
『ありえないね』
後で妖一に聞いてみるか、と心に決める清香。
拳を握り締めている清十郎を見て、清香は言った。
『清十郎、戦いたい?』
「もちろんだ」
眼光鋭い清十郎にびくりとする清香。
そうだよね、戦いたいに決まってる。
トライフォーポイントが始まる。
「大田原さんが珍しく止められてたね。素人でも二人がかりだとキツいのかな」
桜庭が思い出したように清十郎に向かって呟く。
おそらくは清十郎の穴を埋めるためのカバーのせいで、自分の守りが疎かになっていたのだろう。
「バカなんだバカ!」
庄司が大田原に向かって叫ぶ。
「バカは黙って突っ込め!!」
それが大田原さんのいいとこらしい。
そう聞いていた清香は笑った。
見事、大田原のチャージでトライフォーポイントは防いだ。
次は、王城の攻撃だ。
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