11th down
清香の目の前で選手達が円陣を組む。

大田原が一呼吸おいて話し始める。

「騎士の誇りにかけて勝利を誓う。そう我々は敵と闘いに来たのではない。倒しに来たんだ!」

大田原が拳を円陣の中心に差し出す。

そして、それを合図に皆が叫ぶ。

「Glory on the Kingdom!」


選手達はそれぞれのポジションにつく。

そしてキックオフ。
最初は泥門の攻撃。

清十郎のポジションには背番号93が入っている。

清香はベンチに、まるで卒業式でならう座り方のようにきちんと足を肩幅に広げ、その上に手をのせて座っている清十郎を見た。

きっと出たくて仕方ないに違いない。

泥門の1番、蛭魔がボールをキャッチし、つぶされる場所から攻撃が始まる。

ボールがあのアイシールドの21番に渡されるが、ボールをはたかれギリギリで泥門ボール。

ボールの持ち方が酷い…。
清香は唖然とした。

「清香、いいかな」

高見が昨日まとめておいたバインダーをもって話しかけてくる。

『うん、なに?』

「あのアイシールドの21番…彼が逆転タッチダウンを決めたんだよね」

『残り9秒でね』

「どうして最後の1プレーまで出さなかったのかな」

清香は笑った。

『仮説はあるけど、まずは監督に聞いてみた方がいいんじゃない?』

その話を聞いていた庄司は改めて桜庭と清十郎に尋ねる。

「どうって…いやその、結構速い人だな、と」

桜庭は困ったように答える。

「1プレーで断言はできませんが…おそらくタッチフットの選手です。指導者はおらず長年我流でやっている」

清香は納得した。
私の仮説とは違うけど、確かにその線は考えられる、と。

「あのカットは一朝一夕で身につくものではない。素人ではありえません。だが走りに怯えを感じます。異常なほど衝突を恐れている」

『確かに、彼タックルしてくる相手を避けてないもんね。逃げてる』

清十郎は清香の言葉に頷く。

「彼はまだ王城の脅威ではないでしょう」

清十郎が問う。
お前はどう思ったのか、と。

『私はあのカット、毎日人ごみを避け続けたように見えた。人がいないルートを的確に瞬時に判断する』

「しかし、なにもスポーツをせずにあのような走りを身につけたとでも?」

『カットまではいかなくても、私は幼い頃からスポーツをしていないのに、毎日走り込む少年を見てきたからね』

桜庭はくすりと笑う。
進のことか。
多分進はそれが誰か気づいていないようだけど。

『タッチフットの場合、ボールはアメフト規定の大きさではなく、ジュニア用。長年我流とはいってもさすがにはたかれにくいボールの持ち方くらい分かると思うけど?』

桜庭はあっと声を出す。

「進達が指導者がいないって分かったのって、ボールの持ち方か!」

『清十郎の言う長年っていうのがどれくらいかは、分かんないけど、タッチフットなら多少の接触に慣れてると思うしね』

ふとグラウンドを見ると、蛭魔がアイシールド21に的確なボールの持ち方を教えている。

『これで、アイシールドの本当の走りが見れるかな』


prevnext

(11/22)

bkm



back(表紙へ戻ります)
top

※章内ページ一覧へは
ブラウザバックでお戻りください
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -