(少し注意)
雲水から会場で話そう、と言われる。
清香が頷くと、雲水は偵察メンバーと共に正門へと向かった。
そして講堂内には一休と阿含、清香のみになった。
清香は座り込んでいる一休の近くに寄る。
『えと、一休…?』
「なんで、なんで俺に黙ってたわけ?」
清香は考えを巡らせる。
一休の言っていることはどのことなのだろうか。
本名はすでに名乗っていた。
しかも一休は私が女だということに、三番目に気づいた。
一休は同学年ということもあり、神龍寺でもかなり清香のことを知っている方だった。
「やめるんなら、俺に一言言ってくれても良かったじゃん!」
『…一休、あのね』
「言い訳なんて、聞きたくない」
そういうと、一休は講堂から出て行った。
清香はその背中を目で追った。
「あーあ一休を怒らせたな」
『はあ…どうしよう』
「いーんじゃねーの。ほっといて」
投げやりな阿含を睨む。
『一休は友達だよ、仲直りしたい!それに、理由も聞いて欲しい!』
阿含はニヤリと笑った。
「そう、その理由な」
『え?』
清香は背筋がぞくりとした。
周りには誰もいない。
二人きりの状況。
「お前が神龍寺に来た理由っての、教えろよ」
阿含は清香の右腕をつかむ。
その握力の強さに、清香は顔を歪めた。
『あ、阿含…?』
「な?俺だけでもいいから、教えろよ。てか、女を吐かせる方法なんていくらでもあるんだけどな」
清香は硬直した。
なんとなく、分かった。
清香は阿含から逃れようと必死にもがく。
『お願い、やめてよ!』
「あーあー暴れるなって。痛くしねーからさ」
『いいの?阿含はともかく、私が会場に行かないと、王城の皆は怪しむよ?』
阿含は、はぁと息を吐き、腕を離す。
「からかっただけだ。んな怒るなよ」
『…』
清香は阿含を再度睨む。
そして、講堂から出て行った。
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