『急にこの神龍寺を辞めて、すみませんでした。しかし……俺は、私は言わなければならないことがあります』
清香が『私』と一人称を変えたことで、数人を除く生徒が身を乗り出した。
そのほとんどがラインマンだ。
「ち、ちょっと待てよお」
その一人、山伏先輩が口を出す。
「今、私って…」
「山伏、黙るんじゃ。今は耳を傾けよ」
山伏先輩は身を引く。
『お察しのとおり、私は女です』
ラインマン達の鼻息が荒くなっているのは気のせいだろうか。
いや、気のせいと信じたい。
『進藤清和と名乗っていましたが、本名は進清香。王城ホワイトナイツ、進清十郎の双子の姉です』
次は阿含以外の全員が驚きのあまり、硬直する。
阿含はニヤニヤとしている。
先輩達の反応が面白いのか、はたまた清香の反応を期待しているのか。
「ま、待て!」
立ち上がったのは阿含の隣にいた雲水。
清香は予想通りだと思った。
何よりも双子という言葉に敏感な雲水なら、清香の言葉に反応しないわけがない。
「女ということは知っていた。しかし、あの進と双子!?そんなこと聞いていないぞ!」
「うっせーんだよ!少しは黙って話聞けねーのか!雲水ちゃんはよお!!」
阿含は怒鳴るが、その顔は笑っている。
雲水の反応があまりにも面白かったのだろう。
阿含に正論を述べられ、仕方なしに座る雲水。
改めて清香に注目する。
もう一人、あり得ないといった顔で清香を見ていた人物がいた。
細川一休だ。
清香はその痛いほどの視線にも気づいていた。
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