最後の化学の授業が終わり、清掃後に終礼に入る。
先生が一通りの連絡を伝え終わった後、学級委員長が号令をかけた。
「清香、部室まで一緒に「進さ〜んっ!!」
教室から先生が出て行くと同時に先ほどのように取り囲まれる清香。
清十郎の声がかき消される。
『ちょっと…!せ、清十郎、後でちゃんと行くからね!』
クラスの女子の中で一番背の高い清香は、女子達に囲まれながら清十郎に訴えかける。
顔をしかめる清十郎をなだめながら笑顔で答える桜庭に心の中で感謝しながら清香は仕方なく女子達の質問に答え始める。
『えっと…まずは誰の質問?』
「はいワタシワタシ!進さんは進君と本当に姉弟なの?」
問題より清香が気になったのは自分と清十郎の名前の呼び方だった。
進君と進さん……ややこしい。
『私のことは清香で良いよ?質問の答えだけど…これは本当のことだよ』
顔そっくりだしねぇ〜と呟く女子。
なら聞くなよ!と突っ込みたくなる衝動を抑える。
「好きな人はいるの?」
これは恋バナというやつか?
清香は考える。
この年頃なら聞いて当たり前の質問だった。
『いないよ?』
一斉にえ〜っ!?と耳元で叫ばれる。
キーンとする耳を押さえながら清香は続けた。
『気になってる人ならいるけど』
「誰誰!?」
目を輝かせ、迫ってくる女子に慌てる。
『ひ、秘密だよ!!』
つまんないと愚痴を言い始める女子達に顔の前で手を合わせて謝る清香。
「なんで王城に来たの?」
清香は真顔になる。
清十郎達には決して言わないようにと念を押すと話し出す。
『見てて分かると思うけど、清十郎は何でも出来る。私はそんな清十郎に対して劣等感を抱いていた。私は女だから清十郎に勝てる訳がない。でも私は清十郎の役に立つことがしたかった』
一旦口を閉ざす清香。
『体力的に劣っていることは頭脳で補おうと決めた。だから私はアメリカに留学して、色々なことを学んだ。清十郎が今後何をするとしても手助けするため。そして今、やっと清十郎のアシストが出来るようになった。だからここに入ったんだ』
にっこり笑う清香の目には曇り一つなく、その顔は清々しさに満ちていた。
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