改めて校舎を振り返る。
溜め息を吐いていると校舎内から凄まじい音と共に一人の生徒が走ってくる。
清十郎だった。
探してくれたのだろうかと頬が緩む清香。
「どうして授業に出なかった?」
全く息を乱していないのはいつも通り。
清香は曖昧に濁す。
『いや…迷っちゃってさ〜』
事実だ。
しかし清香を見る清十郎の眼は厳しいものが含まれている。
「…今後迷わないように俺の近くにいろ」
『別に清十郎の近くにいなくても今度からは迷わないようにするよ。教室で食べるし』
清香は目を逸らして呟いた。
ラブと小春には悪いが、学校で迷わずに過ごせるようになってから弁当を食べよう。
それを聞いた清十郎は溜め息を吐くと、踵を返し校舎内へ入っていく。
教室へ戻るのだと理解した清香は慌ててその後ろ姿を追いかけた。
教室に着き自分の席に座ると、即クラス中の女子に囲まれる清香。
顔が引きつる。
「進さん!今までどこにいたの?」
「せっかく昼休みに質問しようと思っていたのに!」
『え、えーっと…放課後でも良い?もう授業始まっちゃうし…!』
キャーキャー騒ぐ女子に苦笑いしている桜庭を横目で見る清香。
清十郎は真面目に予習している。
次の授業のチャイムが鳴り、先生が入ってくる。
清香を取り囲んでいた女子は皆席に戻っていく。
軽く憔悴気味の清香は疲れ切った表情で、カバンから今日貰った教科書を取り出した。
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