急に教室が静かになる。
「進って…俺らのクラスの進?」
「進くんの親戚?」
ひそひそと喋る声が聞こえる。
清香は意を決して教室に足を踏み込んで、精一杯の笑顔をつくった。
『どうも〜』
芸人のような登場の仕方をしてしまったが、清香は気にする余裕すらなかった。
「じゃあ軽く自己紹介してね。」
藤川先生が清香に促した。
『し、進清香ですっ』
藤川先生がキョトンと呟いた。
「え…それだけ?なんか進清十郎君の自己紹介のときみたいですね」
先生の一言でクラスの生徒は一年生のときの自己紹介を思い出し、ああアレか…と呟き出す。
『…進清十郎とは双子で私が姉です。よく似てるって言われますが、性格は違うので皆さんよろしくお願いします!』
やっと調子を取り戻した清香。
淡々と自己紹介をすませる。
『アメリカに留学してました。アメフトは清十郎より始めたのは先です』
「清香君もアメフトするんですか。ポジションは?」
藤川先生がすかさずフォローした。
『清十郎と同じLBです』
まあ清十郎には適いませんけど、と笑う清香に対して、ある男子が質問した。
「進と姉弟ってことは、やっぱり機械に弱いのか?」
『そこらへんは清十郎と一緒にして欲しくないです!機械にはかなり強いんですよ』
にっこりと笑いながら返す清香。
「うわー…今の笑顔可愛いかも」
桜庭はクラス内の心の代弁をした。
「そうか?」
清十郎は無表情である。
機械オンチを馬鹿にされたことにムカッときたんだろう、と桜庭は思った。
「じゃあこれで紹介を終わりたいと思います。あと、せっかく清香君が来たんだから、出席順の席ではなく、くじ引きで席替えをしましょうか」
クラスの大半が、やったあ!と叫びだした。
桜庭もその一人である。
「じゃあ取りに来て」
先生は手製の割り箸くじを順に生徒に取らせて行った。
普通、清香が席替えの主役なので、清香に最初に引かせるべきだったが、先生はそんなことなどお構いなしである。
皆に引かせたあと、黒板にランダムに数字を書いていく。
『えっと…17番』
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