もうHRが始まっているのだろう。
廊下にいたはずの生徒たちがいなくなって、シーンとしている。
清香は藤川先生と雑談をしながら、廊下を歩いていた。
「君はアメリカから帰ってきてこの学校に来たんだったね」
そう言われ、ハッとする清香。
神龍寺は男子校なので、ごまかすために母さんがそういって説明していたことをすっかり忘れていた。
『え、ええ。そうです』
たどたどしく答える清香。
「私の担当は古典なんだが、是非とも君の英語を聞いてみたいものだ」
あは…と力なく笑う清香。
英語は文法云々は全然分からないのだが、きっとこの先生は教科書のような英語を期待している。
『(無理だって。…というか早く着けよっ!この学校広すぎ!)』
脳内で愚痴りまくりながら作り笑顔で対応している清香なのだった。
---清十郎の教室
「ねえ進。清香ってどのクラスになるのかな?」
「興味はない」
桜庭は清十郎に意気揚々と清香のことを聞いたが、受け流される。
「もう…。心配じゃないわけ?神前とか、めちゃナルシストだし、清香にすぐに告っちゃうよ?」
「……心配ない…」
桜庭は後ろの席の清十郎の口調が少し鈍ったのにハッとした。
「やっぱり心配なんだね」
「違う」
清十郎の目つきが少し鋭くなったため、桜庭は内心焦りながら前を向いた。
「遅いなぁ……先生…」
桜庭がそう呟いた途端に、教室の扉が開けられた。
「今日は転入生が我がクラスに来ることとなった」
藤川先生の一言で女子は、男子かな!?と騒ぎ、男子は女子コールを始める。
「進「何も言うな」
桜庭はふっと笑った。
「(嬉しいんだ)」
「紹介しよう、進清香君だ!」
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